【専門家監修】産後の「後陣痛」はいつからいつまで?痛みや対処法まとめ

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
陣痛や帝王切開の痛みに耐えたら、出産は終わり!と思っている人は多いですよね。ところが、出産が終わっても「後陣痛」が起こり、痛みに耐える時間はもう少し続きます。
そこで今回は、「後陣痛ってなに?」「実際に痛みが強い場合はどうしたらいい?」という人の参考になるような内容をまとめてみました。
後陣痛とは?
後陣痛(こうじんつう)とは、産後の子宮収縮に伴う痛みのことです。後腹(あとばら)と呼ばれることも。
妊娠中に大きくなり、分娩で胎盤の剥がれた子宮が、元の状態に戻る”子宮復古”のために必要な生理現象の1つです。
病院の方針によっては、出産後子宮の収縮を促すための薬を飲むこともあります。ただし、日常生活に支障をきたすほどに痛みが強く、かつ子宮復古の経過が良好と医師が判断すれば、服薬中止の判断が出ることもあります。
また、赤ちゃんへの授乳や、おっぱいマッサージなどで乳首に刺激を与えると痛みが増します。これは、母乳の分泌を促すホルモン(オキシトシン)が子宮の収縮も促すためです。
後陣痛は産後のお母さんの身体を整えるために必要な痛みではありますが、座っているのも辛いほどの痛みを感じる人もいるので、周囲の配慮などが必要になります。
後陣痛の痛みについて
後陣痛の痛みには個人差があり、また出産のたびに異なることも珍しくはありません。これからお産を迎えるなら、どのような痛みがどれくらい続くのか知っておくことで事前の心構えができるはず。この機会にぜひチェックしておきましょう。
後陣痛には個人差がある
初産の場合は特に、”後陣痛の痛みを感じなかった”という人も多め。全体の4割ほどは後陣痛が「ない」と答えているアンケート結果もあります。また、痛みがあっても我慢できる程度だった、という声も全体の2割ほど出ています。
逆に、2人目、3人目や多胎分娩の場合は強い痛みを感じる人が格段に増えます。回数を重ねるごとに痛みが強くなるため、経産婦さんや多胎妊娠中の妊婦さんはあらかじめ心づもりをしておきましょう。
これは、経産婦は初産婦よりも子宮の戻りが早いことが要因です。多胎妊娠や羊水過多では大きく引き伸ばされた子宮が、産後に強く収縮するので痛みも強くなります。
痛みはどれくらい?
個人差のある後陣痛の痛みですが、ひどい人は本陣痛と同じくらい痛むこともあります。痛みでなかなか眠れない、夜中に目が覚めてしまう、なんて人もいるほど。
あとは授乳時に乳房を吸われるとオキシトシンという子宮を収縮するホルモンが出るので、授乳しながら痛みと格闘する人もいます。
後陣痛の痛みの種類
- 生理痛のような痛み
- 子宮をギューっと握られている感じ
- キリキリ、キューっとつっぱる感覚
- 筋肉痛のような痛み
痛みが出るのは子宮を中心とした下腹部がメインです。中には、腰痛やお尻に痛みを感じる人もいます。
帝王切開でも後陣痛は起こる
陣痛を経験していない帝王切開でも子宮復古は起こるので、後陣痛の痛みも生じます。お腹を切った傷口の痛みと区別しにくい場合もありますが、不規則に一定時間だけ痛みが生じる場合は後陣痛と考えてよいでしょう。
痛みで身体に力が入ると傷口に響くうえに、術後すぐは自由に動けない状態が続くので、辛いときは医師や助産師に相談してみて。
期間はいつから?いつまで?
後陣痛は、出産直後から起こります。痛みのピークは産後3日目くらいまでですが、不規則な鈍痛がその後も数週間続くことも。こちらも個人差が大きいのですが、産後すぐのような強い痛みがぶり返さなければ大きな問題はありません。
痛みが続く場合
産後4,5日以降も出産直後と同じような後陣痛が続く場合は、子宮筋層炎や子宮内膜炎などの可能性があるため、受診が必要です。ほかにも、数日後に強い痛みが再発したり、38℃越えの発熱が2日以上続いたりするときも病院に相談してみて。
悪露の様子からも、子宮トラブルの兆候はうかがえます。
- 大量に出る
- 極端に少ない
- 異臭がする
服薬や手術が必要になるケースもあるので、気になるときは少しでも早く医師や助産師に相談してみてくださいね。
後陣痛の対処法
後陣痛の痛みは生理現象の一つですが、日常生活や睡眠に支障をきたす場合もあるので対処法を知っておくことも大切。しかし、人によって程度が異なるため、医師や助産師からは特に指導されないことも多々あります。
そこで、実際に後陣痛を経験したお母さんたちが実践してきた対処法をまとめてみました。特別な知識や技術はいらないものばかりなので、ぜひ参考にしてみて。
1:リラックスする
痛みは、身体が緊張している状態だと強く感じやすくなる傾向があります。不安や焦りなどの気持ちがあると力が入りがちに。そのため、自分のリラックスできる環境を作ってみるのが、1つ目のポイントです。
- 気を紛らわせる
- 横向きに寝る
- お腹をマッサージする
赤ちゃんのお世話や育児記録を書くことで気が紛れることもありますし、可能であればおしゃべりをしたり、テレビやラジオを視聴するのもおすすめ。目が疲れない程度に、本や雑誌を読んでみてもいいでしょう。
横向きに寝るときは、お腹を丸めて小さくなるようなイメージで。細長く丸めた毛布を足の間に挟んだ体勢もリラックスしやすいですよ。お腹のマッサージは撫でるような力加減で、優しく行うのがコツ。好きな香りのクリームやアロマを使ってみてもいいかも。
2:身体を暖める
身体が冷えていると、子宮収縮が促進されたり痛みを強く感じやすくなったりします。妊娠中のお腹の張り対策と同じような要領で身体を暖めるように心がけるのが、2つ目のポイントです。
- 白湯を飲む
- 靴下やレッグウォーマーを履く
- 湯たんぽやホッカイロを使う
産後は普段よりも意識して水分補給をするのが望ましいのですが、そのときに白湯や暖かいノンカフェインのお茶を飲むようにすると、自然と身体も暖まります。
靴下やレッグウォーマー、湯たんぽ類はできれば入院グッズの中に入れておけるとgood。病院内は基本的に暖かく保たれていますが、手首足首やお腹周りは冷えやすいので気をつけてみてください。
3:下腹部を圧迫する
3つ目のポイントは、下腹部を圧迫して収縮している子宮のサポートをすること。圧迫の方法はいくつかあります。
- うつぶせの体勢になる
- クッションを下腹部に当てる
- 骨盤ベルトを締める
ただし、圧が強すぎると逆効果になる場合もあるので要注意。あくまでも気持ちの良い範囲でおさえるのがコツです。
痛み止めを使う
どうしても強い痛みがひかないときは、痛み止めの薬を使うこともあります。基本的にはロキソニンなどの内服薬を飲むことになりますが、帝王切開の術後は座薬になることも。ほかにも、筋肉注射を行うケースもあります。
痛み止めは1日に使える回数が決まっており服用の間隔も空けなければならないため、赤ちゃんのお世話や睡眠の時間とタイミングを合わせられるとベスト。
ちなみに、痛み止めの使用に対する考え方は医師や助産師によって異なることもあります。”病気ではないのでなるべく我慢して”と言われる場合もあれば、”薬を飲んで少しでも身体を休めて”と言われる場合も。
頭痛や傷の痛みなどがあるときは併せて伝えると考慮してもらいやすいので、どこがどのくらい痛いのか明確に伝えてみてください。
まとめ
出産を終えて一安心…と思ったらやってくる後陣痛。その存在を知らずに産後を迎え、予想外の出来事に驚いてしまう人も少なくはありません。陣痛中のように付き添いや病院スタッフのサポートが受けにくいのも大きなネックです。
痛みや辛さは人それぞれということを念頭に置いて、産後の心と身体を少しでも休められるように工夫してみましょう。
一昔前は「後陣痛は我慢すべきもの」という風潮がありましたが、今は無痛分娩も増えてきているので、後陣痛が思いのほか辛いという人が増えてきました。
授乳や産後の生活に支障があるようであれば、無理せず医療提供側に申し出て我慢しすぎないようにしてください。