【専門家監修】妊娠中のコーヒーはOK?カフェインの影響と付き合い方

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ヘルスケア

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。

妊娠により制限されることはいくつかありますが、まず思い浮かぶのは食生活。アルコールはもちろんのこと、生ものや塩辛いものなどを控えなくてはならなくなりますが、カフェインの入ったものを控えるのがなによりつらい!という人は多いのではないでしょうか。
そもそもカフェインの効果って?どの程度なら摂取していいの?どんなものなら飲んでも良いの?
自身と赤ちゃんのために、それらの疑問を解消しておきましょう。

カフェインの効果と摂取について

食事のあとや、リラックスしたいとき、眠気を覚ましたいとき、集中したいとき…コーヒーを1日数杯飲むことが習慣づいているという人も多いでしょう。ただおいしいからではなく、カフェインによってもたらされる効果によるところも大きいはず。
覚醒作用があるため、コーヒーなどを摂取することにより眠気や疲労が和らぎ、集中力が高まるなどの効果が期待できます。また、消化促進効果や利尿効果により老廃物の排出を促す、自律神経の働きを高めるなど、適切な量を摂取することによる効果は数多く謳われています。

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※茶葉やコーヒー豆は種類やメーカー、焙煎方法により多少の差異があります。

カフェインに対する感受性は人によって大きく差があるため、日本では適切な摂取量というものはとくに定められてはいません。参考までに、カナダ保健省(HC)では、健康な成人の1日のカフェイン摂取量は400mg=コーヒーをマグカップ(237ml)約3杯までと勧告しており、目安を提示している国や機関もあります。
参考:日本食品標準成分表2015年版(七訂):文部科学省レッドブルに含まれるカフェインについて:: エナジードリンク :: レッドブル・ジャパン栄養成分一覧 ソフトドリンク 商品情報(カロリー・原材料) サントリーHealth Canada Reminds Canadians to Manage Caffeine Consumption - Recalls and safety alerts

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妊娠中にカフェインを控えたほうがいい理由

胎児への影響

2008年にイギリスの2つの大学の研究チームが妊娠8~12週の妊婦2,635人を対象に行った研究によると、本来有害物質を通さない性質を持つ胎盤をカフェインは素通りすること、母親が200mgのカフェインを摂取した場合、胎盤の血流は平常時に比べ25%減少することなどがわかりました。当然ながら胎児はへその緒を経由して胎盤から酸素と栄養を受け取っているので、血流の減少はそれを妨げる要因となります。カフェインの摂取が胎児の発育遅延、早産、低体重児との関連性が指摘されているのもこうしたことが原因と考えられるでしょう。
また、胎児はカフェインを分解するための酵素を持っておらず母体の代謝のみが頼りになってしまいます。妊娠するとカフェインの代謝能力が落ちてしまう場合も珍しくないので併せて注意が必要です。
参考:Maternal caffeine intake during pregnancy and risk of fetal growth restriction: a large prospective observational study | The BMJ

貧血との関係

妊娠中はただでさえ貧血を起こしやすい状態にありますが、「コーヒーは貧血に良くない」と言われることがあります。
これはコーヒーそのものやカフェインが直接貧血に結びつくわけではなく、カフェインが含まれている飲みものにはタンニンやそれによく似たクロロゲン酸という物質が含まれていることが多いためです。渋みの主成分であるその2つは、カフェインと結びつき効果を抑制する働きがありますが、それと同時に鉄分やカルシウムなどのミネラルの排出を促す効果があるため貧血に繋がると考えられています。そのため食後の1杯は我慢して、時間を空けてから飲むと良いでしょう。なお、カフェインレスの飲みものにもタンニンやクロロゲン酸は同様に含まれているので、同様に飲むタイミングに注意しましょう。

消化器への負担

妊娠中は子宮からの圧迫やホルモンバランスにより、胃腸の調子が悪くなってしまう人も少なくありません。カフェインは消化器の動きを活発にする作用があるため、人によっては胃もたれや胃酸過多などの症状を引き起こす場合があります。

産後も注意が必要

このように妊娠中のカフェインの影響が懸念されていますが、出産後も通して引き続き注意が必要です。
カフェインを摂取してから30分以内に母乳中のカフェイン濃度は最も高くなり、摂取量のうち多いときは約1.5%が母乳に混じるとされています。
妊娠中と比較すると赤ちゃんへの影響は少ないと考えられますが、1歳未満の赤ちゃんは肝臓の機能がまだ低いため、カフェインをうまく代謝できません。そのため体内にカフェインが滞在する時間が大人に比べると格段に長く、頻繁にカフェイン混じりの母乳を飲むことでカフェインが作用し興奮状態になってしまうことや、なかなか寝てくれないなどといった状態になることがあります。
もし授乳中にコーヒーなどを定期的に摂取していて、なかなか寝ない、泣く回数が増えた、ハイテンションのままはしゃぎ続けているなどの状態が赤ちゃんに見られるようならカフェインの影響を疑うと良いでしょう。
ちなみに、はしゃぎ続けているだけなら問題ないのでは?と思うかも知れませんが、興奮状態が持続しリラックスすることができていない=赤ちゃんの負担となっている、ということなので注意しましょう。

妊娠中や授乳中、カフェインは完全に断つべき?

カフェイン摂取による母子への悪影響を一通り紹介しましたが、ではカフェインを完全にシャットアウトすべきかというと、そういうわけでもありません。もちろんカフェインの摂取を極力避けるのがいちばん安心ですが、適量以下であれば悪影響の心配はほとんどないとされるうえ、ストレスを軽減する効果を得ることができます。
各国の機関が研究結果などを踏まえて「妊娠中の1日の適量」を提示しています。

  • 世界保健機関(WHO) コーヒーをカップに3~4杯───カフェイン量、カップ容量の提示なし
  • アメリカ産婦人科医院会(ACOG) 200mg───コーヒーをマグカップ(237ml)約1.4杯
  • イギリス食品基準庁(FSA) 200mg───コーヒーをマグカップ(237ml)約1.4杯
  • カナダ保健省(HC) 300mg───コーヒーをマグカップ(237ml)約2杯

機関により差はありますが、いずれにせよ絶対的なボーダーラインではないので参考値として見ておくと良いでしょう。心配であれば健診時に担当医に確認することをおすすめします。
参考:Healthy eating during pregnancy and breastfeeding委員会意見第462号:カフェイン摂取中の中等度:産科&婦人科[ARCHIVED CONTENT] Food Standards Agency - Pregnant women advised to limit caffeine consumption

妊娠中・授乳中でも安心して楽しめる飲みものは?

完全にカフェインを断つ必要はないと聞いても、心配が拭い切れなくて気になってしまう、少しでも悪影響が出る可能性を避けたい…そう思う人もきっといるはず。でも、単なる水分補給としてではなく、リラックスタイムを楽しんだり味そのものを好んでコーヒーなどを愛飲したりしていた場合、水や麦茶だけではどうしても物足りないですよね。
安心しておいしく楽しめるカフェインレス飲料を紹介します。

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デカフェ

最近ではかなりメジャーな存在になってきているデカフェ飲料。デカフェとは、本来ならカフェインが含まれている飲料からカフェイン成分のみを取り除いたもの、またはカフェイン添加の工程を省いて完成させたものを指します。
全国公正取引協議会連合会によると、コーヒーの場合であればカフェインを90%以上除去したものを「カフェインレスコーヒー」と記載するため完全にカフェインが含まれないわけではありませんが、含まれていてもごく微量なので母子に及ぼす影響はほとんどないと言えるでしょう。「ノンカフェイン」「カフェインゼロ」と記載されている場合カフェインは含まれていません。

最近ではスターバックスやタリーズコーヒー、ミスタードーナツなどの大手チェーン店でもデカフェメニューが用意されており、市販のコーヒー豆やインスタントコーヒーにもデカフェタイプがあるので、気軽にコーヒーを楽しむことができます。
もちろんコーヒーだけでなく、紅茶や緑茶などでも大手飲料メーカーから続々とリリースされています。
参考:コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約・施行規則対照表(平成28年9月23日施行)

たんぽぽコーヒー

とくに妊娠期から産後の女性におすすめされるのがたんぽぽコーヒー。
コーヒーと言ってもコーヒー豆は使用されておらず、たんぽぽの根を焙煎して作られます。アメリカで考案された飲料ですが、たんぽぽの根は東洋医学で生薬して用いられるほどの効能があり、産前産後の女性にはとくに嬉しい効果が期待できます。

  • カフェインが含まれていない
  • 利尿作用があり、むくみに効く
  • 冷えを改善する
  • 消化器の機能を整える
  • 母乳の分泌を促進する

などなど、産前産後でなくても飲みたくなる効能が期待できます。肝臓の動きを活発にする効果もあるので、肝疾患がある人は注意しましょう。

ハーブティーは注意が必要

リラックスタイムにぴったりなハーブティーですが、ハーブは医薬品ではないとはいえゆるやかになにかしらの効果をもたらすとされる食品です。
ハーブには様々な種類がありますが、妊娠中に良いものもあれば禁忌とされるものがあるだけでなく、妊娠後期には良くても妊娠初期には注意が必要なものや飲みすぎるとお腹を下したりするものがあったりと、気軽に手に入る割には注意が必要です。
産前産後はデリケートな体の状態にあるので、『マタニティ専用』や『授乳期用』と表示があるものを引用するようにしましょう。

AMOMA マタニティブレンド

まとめ

妊娠しても授乳していても、おいしく気分転換できる飲みものが恋しくなるもの。
カフェインの効果や働きかけや影響を理解して、適量を楽しみましょう。また、脱カフェインをきっかけに様々なデカフェ飲料を楽しんでみるのも良いですね。

専門家コメント
一時期に比べて、デカフェ飲料も増えてきて妊婦さんの飲めるものの選択肢が広がってきています。
カフェインを完全に除去しようとするのは精神的にもストレスになってしまいます。朝1杯のコーヒーブレイクもたまには楽しむ余裕を持って、気楽にマタニティライフの飲み物をチョイスしてみてください。
妊娠中の水分補給の習慣は、産後の母乳量の獲得のためにも必要なことです。色々な種類の飲み物をこまめに飲む習慣をつけましょう。

【監修】浅井貴子 先生

浅井 貴子(あさい たかこ)東京都在住フリーランス助産師 大学病院、未熟児センター勤務ののちフリーランスとして活躍。現在近隣の行政で、母親学級、育児相談、年...

プロフィール

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