【専門家監修】赤ちゃんにはちみつは厳禁!1歳まで食べさせない理由

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
赤ちゃんは消化機能や免疫が未発達のため、離乳食には様々な気を使うものです。
中でも気をつけなければならないのがはちみつです。両親だけでなく祖父母や友人知人にもしっかりと周知徹底しておかなければ、大変な事態を招くことがあります。
特に高齢者世代は、はちみつは自然由来で健康によいと考えて赤ちゃんに与える可能性がありますので、注意が必要です。
今回は、赤ちゃんにはちみつをあげてはいけない理由や、はちみつのかわりに食べさせてもよい甘味料などを解説します。両親だけでなく、赤ちゃんが身の回りにいる人すべてが目を通して、赤ちゃんにはちみつを食べさせる危険性を理解していただけると幸いです。
「乳児ボツリヌス症」を発症する危険性
赤ちゃんにはちみつを与えてはいけないことは、決して両親の過保護からくるものではありません。日本では、厚生労働省が公式ホームページにて「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」と警告しています。
(参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161461.html)
まずは、ボツリヌス菌の概要やボツリヌス菌が引き起こす乳児ボツリヌス症について解説します。
ボツリヌス菌が引き起こすボツリヌス症
はちみつには、ボツリヌス菌という細菌が含まれていることがあります。ボツリヌス菌自体は土壌や井戸水などにも含まれているもので、大人が食べても何の問題も起きません。
しかし、腸内環境が整っていない赤ちゃんがボツリヌス菌を食べてしまうと、乳児ボツリヌス症を発症し死亡することもあります。ボツリヌス症とは、ボツリヌス菌が作るボツリヌス毒素によって引き起こされる病気です。医学的には「神経中毒疾患」に分類されています。
死に至る可能性がある乳児ボツリヌス症の症状
1歳未満の赤ちゃんがはちみつを食べることで発症する可能性がある乳児ボツリヌス症は、非常に恐ろしい病気です。
3日以上の便秘に続き、元気がなくなりミルクや母乳を飲む力が弱まります。また、首の座りが弱くなり、泣き声が弱まり、さらに症状が進むと麻痺症状が現れます。全身の低緊張状態がすすみ、麻痺が横隔膜まで達すると人工呼吸器を装着しなければなりません。
アメリカでは乳児ボツリヌス症の死亡率は1%と決して死亡率が高いものではありませんが、日本では2017年に乳児が死亡していることから、決して安心はできません。
はちみつを赤ちゃんから遠ざけよう
乳児ボツリヌス症は、はちみつなどのボツリヌス菌が含まれている食品を食べなければ発症することはありません。だから、赤ちゃんには絶対にはちみつを食べさせないことが大切です。
赤ちゃんの手が届く場所にはちみつを置かない
赤ちゃんは、好奇心旺盛です。特にハイハイやつかまり立ちが始まり、活発に動き出すと目に入るものはすべて口に入れようとしますよね。食べ物だけでなく、車の鍵やリモコンなどなんでも口に入れてしまいますので、赤ちゃんの手が届く場所にはちみつを置かないようにしましょう。
両親だけでなく、兄弟姉妹、祖父母など自宅に出入りする人間にも、「赤ちゃんははちみつを食べると死んでしまうことがある」とはっきりと伝えて、はちみつを持ち込まないようにしてもらいましょう。
はちみつが含まれている食品やジュースは厳禁
2017年に死亡した赤ちゃんは1ヶ月間にわたり、はちみつが入った離乳食を食べていました。はちみつに含まれるボツリヌス菌は熱に非常に強いため、100度以上に加熱しても死滅しません。厚労省のサイトにも「ボツリヌス菌(芽胞)の耐熱性は120℃で4分とされており、通常の加熱や調理では死にません。」と記載がされています。
ですので、加熱しても離乳食に入れるのは厳禁。また、お菓子やパンなどに含まれるはちみつにも注意しましょう。「神経質な」と思われるかもしれませんが、大切な我が子の命を危険にさらす可能性があるはちみつは徹底的に排除すべきです。
赤ちゃんが食べるものを買うときは、商品パッケージの裏の成分表示をしっかり確認してはちみつが含まれていないものを選びましょう。
取り分け離乳食は要注意
生後5ヶ月から6ヶ月頃からスタートした離乳食は徐々に幼児食に近づいていき、1歳近くなる頃には大人の食事を作る過程で赤ちゃんの分を取り出す「取り分け離乳食」に移行する家庭も多いのではないでしょうか?
その時も、調味料にはちみつを使っていないかどうか確認しておいてくださいね。豚の角煮や煮物などにはちみつを使用するレシピがありますので、赤ちゃんが口にする可能性がある場合は、はちみつを使わないで別の甘味料で代用しましょう。
外食やお呼ばれ、もらいものにも気をつけよう
自然派、オーガニックなどのこだわりがあるお店での外食、友人知人宅での食事にも、はちみつが入っている可能性があるので注意しなければなりません。はちみつを砂糖代わりに使うことで優しい甘味となりおいしく仕上がりますが、赤ちゃんにとっては毒になる可能性があります。
でも、他人やお店にまで「はちみつを使わないように」と事前に通知することは難しいですよね。そのため、生後1年に満たない赤ちゃんには、親などの信頼できる人が作ったものとベビーフード以外は食べさせないようにしたほうがよいでしょう。
アメリカでは毎年100件以上の発症報告がありますので、決して人ごとではありません。
赤ちゃんにはちみつ以外で食べさせても大丈夫な甘いものとは
はちみつがダメなら、他にどんな甘いものを食べさせればいいの?という人のために、はちみつの代替となる食品を解説します。
赤ちゃんには甘味料は不要
基本的に赤ちゃんの離乳食は薄味ですので、わざわざ甘いものを食べさせる必要はありません。
離乳食のレシピには、砂糖を入れるレシピはほとんどないはずです。子どもは甘いものが大好きですが、あえて食べさせる必要はありません。
甘みを出したいならメープルシロップを活用
甘味を出す必要はありませんが、調理の過程で甘味が必要な場合はメープルシロップを活用すると良いでしょう。
メープルシロップは、はちみつとは異なりボツリヌス菌が含まれていることはありませんので赤ちゃんにも安心です。ただし、赤ちゃんの味覚は未発達で、刺激的な味や甘すぎるものは厳禁ですので、離乳食に少し混ぜる程度にしておきましょう。
メープルシロップは、生後10ヶ月を過ぎてからであれば食べさせても大丈夫ですが、アレルギーの心配はゼロではありませんので、他の食材と同様に初めて与えるときは少しだけにして、様子を見てから使うようにしましょう。
甘いおやつは果物でOK!
赤ちゃんに甘いものを食べさせてあげたい人は、季節の果物がおすすめです。みかんやリンゴ、ぶどうなど、離乳食の進行に合わせて取り入れてあげると、食べる喜びにも目覚めてもらえるはず。
ただし、果物はアレルギーが発生する可能性があるので、初めて食べさせるときは一口だけにして、しばらく様子を見てくださいね。
それから、デラウェアなどの小さなぶどうは気管に詰まらせる危険性があるので、食べさせないほうがよいでしょう。赤ちゃんは、わざわざはちみつを食べさせなくても安全な甘い食べ物はたくさんありますので、他のもので代用してくださいね。
まとめ
赤ちゃんにはちみつをあげると乳児ボツリヌス症を発症する可能性がありますので、絶対に食べさせないようにしましょう。両親だけでなく、赤ちゃんと関わる人全てが気をつけてあげましょうね。
厚生労働省によると、1歳を超えてからは問題ないとされていますので、それまでは調理済み・未調理を問わずはちみつを赤ちゃんに食べさせないでください。
0歳児の離乳食は基本、素材の甘さで十分と言われています。かぼちゃや人参、かぶやキャベツなどの甘味で美味しく作れる事が多いです。じっくり加熱して甘味を引き出してあげましょう。