【専門家監修】妊娠したら現れる正中線とは?妊娠線との違いや原因

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
妊娠すると妊娠線に悩む人が多いものですが、「正中線」に悩まされている人も多いって知っていましたか?
そもそも、妊娠して正中線に悩まされるまでその存在すら知らなかったという人も珍しくありません。
今回は、妊娠線と正中線の違いやそのメカニズム、ケアの方法などを解説しています。ぜひ目を通してボディケアの参考にしてくださいね。
正中線とは?
ともに妊娠してから腹部中心に発生するものであるため混同されてしまうこともありますが、妊娠線と正中線はまったく別のものです。
妊娠線は急激な体型の変化により皮下組織が伸びきれずにできてしまうひび割れのような線であることはよく知られていますよね。では、正中線とは一体なんなのでしょうか?
正中線はもともと誰にでもあるもの
妊娠線は新しくできてしまうものですが、正中線は生まれたときから誰にでもあるものです。
人間だけでなく、生物は受精後にこの正中線を中心にどんどん細胞分裂を繰り返すことで体の形が作られていきます。その名残が正中線として残っているのです。通常はほとんどわかりませんが、人によってはうっすらと確認できる濃さで存在していることもあります。
なお、鼻の下の溝やあごの割れ目なども同じく左右対称に細胞分裂した名残りと言われています。
なぜ正中線が目立つようになる?
妊娠後、妊娠線とともに肌の悩みとして挙げられる正中線。では、どうして妊娠後に悩まされることとなるのでしょうか?
原因はホルモンバランス
妊娠中は乳輪や鼠径部の色が濃くなったり、日焼けしやすくなったりシミができやすくなったりします。これは胎盤がメラニン細胞刺激ホルモンを多く産生するためですが、正中線もその影響を受けてしまいます。
通常ならその存在をほとんど確認できないほど薄い正中線がメラニン色素により茶褐色に色づく上、お腹が大きくなるにつれ皮膚が薄く引き伸ばされ、より一層はっきりと確認できる状態になります。また、同じくホルモンバランスの変化により体毛が濃くなりますが、お腹の産毛も濃くなるため正中線がさらに濃く見えることもあります。
色素により濃く色づくだけの現象であるため、皮膚組織がダメージを受けてできる妊娠線と違ってかゆみが出ることもありません。
通常はおへその上下に現れますが、人によっては上は胸下から、下は恥骨付近まで出ることがあります。
いつから目立つようになる?
ホルモンの影響を受けて徐々に濃くなり、お腹が大きくなるにつれ皮膚が張るため目立つようになります。妊娠5~6ヶ月ごろから目立ち始めるケースが多いですが、ホルモンバランスや皮膚の状態、体質など個人差が大きいため、それより早いことも遅いこともあります。
また、妊娠すると必ずしも立つようになるわけではなく、例えばもともと色白の人はメラニンの生成量が比較的少ないため目立ちにくい傾向にあるとされます。
早く濃く出ても、逆にいつまで経っても出ないようでも、どのみちおかしなことではないのです。
濃くなった正中線はいつ消える?
やはり気になるのは、出現した正中線がいつ消えるかということ。産後もそのままお腹に縦線がくっきりと出たままなのは気になりますよね。産後はお腹の面積が小さくなるため、余計に正中線が濃くなったように見えてしまい落ち込む人もいると思います。
結論から言うと、正中線はやがて消えます。ホルモンバランスにより色素が濃くなっているだけなので、皮膚ダメージによって出現する妊娠線と違い、ホルモンバランスがもとに戻るにつれて徐々に目立たなくなっていきます。
薄くなる時期は人により差がありますが、半年から1年ほどかけて消えていくことが多いようです。
正中線を早く消すには?
いずれ消えるとわかっていても、半年、ましてや1年なんて待っていられない!という人も多いですよね。
正中線を早く改善するのに良いとされる方法をいくつか紹介しておきます。
対策1:ターンオーバーを整える
メラニン色素により色づいた肌をもとに戻すには、ターンオーバーにより皮膚細胞の入れ替わりを促進させることが手っ取り早い方法です。ターンオーバーを整えるのに有効とされる行動は下記の通り。
食事の栄養バランスに気をつける
体は食べたもので作られます。日々の食事で栄養素を意識して摂取することで良い肌状態に近づけるのはもちろんのこと、産後の健やかな体づくりにも役立ちます。
また、栄養素はほかの栄養素と相互作用していることがほとんどです。これらを偏って摂取するのではなく、あくまでも様々な食品をバランス良く食生活に取り入れることで、自然にまんべんなく摂取することを意識しましょう。
- タンパク質
身体作りに欠かせないタンパク質はコラーゲンの材料にもなります。肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などが代表的な食材です。 - ビタミンA
レバー類やうなぎに豊富に含まれるビタミンAは紫外線から皮膚を守り、皮膚や粘膜の形成を助けてくれます。
ですが、妊娠中は摂取量が限られるので気をつけてくださいね。
- ビタミンB群
ビタミンB群、特にビタミンB2とB6はターンオーバーには欠かせません。栄養の代謝や合成、細胞の再生を促進させ、皮膚や粘膜を健康に保つ役割を持ちます。
ビタミンB2はレバー類やうなぎに多く含まれていますが、ビタミンAが非常に多く含まれている食材なので妊娠中は気をつけましょう。牛乳や豚肉、納豆にも多く含まれています。
ビタミンB6はカツオ、マグロ、サンマ、バナナなどから摂取できます。 - ビタミンC
肌のための栄養素といえばビタミンCを思い浮かぶ人も少なくないはず。
特に美肌づくりに不可欠とされるビタミンCは、メラニンの生成を抑えてコラーゲンの増加を助ける役割を持ちます。
柑橘類、いちご、赤ピーマンなどに豊富に含まれています。 - ビタミンE
血行を良くし新陳代謝を促進するため、メラニンの排出を早めてくれます。
アーモンドなどのナッツ類、ひまわり油などの植物油、枝豆、鮎、ウニなどに多く含まれています。 - 亜鉛
肌のための栄養素といえばビタミン類ばかりに気を取られがちですが、亜鉛も重要な要素。
ビタミンCとともにコラーゲンの合成を行い、タンパク質の合成にも大きく関わるため細胞分裂を活発にする働きがあります。
牡蠣やあわび、赤身肉、豆類などに多く含まれています。
生活習慣の乱れを極力減らす
規則正しい生活もまたターンオーバーを整えるために不可欠ではありますが、産後の慌ただしい生活においてはなかなか難しいですよね。特に産後間もなくは赤ちゃんの生活リズムは定まっていないため、まとまった睡眠を取るなんて夢のまた夢…という状態の人がほとんどでしょう。
ですが、徐々に連続して睡眠を取るようになり、昼夜の区別もつくようになってくるのでしばらくの辛抱です。
肌のためだけでなく、産後の体を回復させる意味でも睡眠はとっても大切。昼は赤ちゃんと一緒に昼寝をする、夜はパートナーにお世話を交代するなど工夫をして疲れを少しずつ癒やしながら、赤ちゃんと一緒に生活リズムを作るつもりで過ごしましょう。
また、ストレスも肌の状態を左右する要素。育児中はストレスが溜まりがちですが、上手にガス抜きしながらこなしましょう。

対策2:ケア用品を使う
前述のような体の中からのケアは非常に重要ですが、同時にケア用品による体の外からの働きかけをプラスすることで、さらに肌状態の向上が見込めます。
例えば、夏に日焼けをしてしまったときなどに、美白ケアに力を入れることはよくありますよね。日焼けはメラニン色素が生成されることにより発生しますが、同じメラニン色素による正中線の出現にも同じようなケアが有効と言えます。有効な成分を配合したケア用品選びつつ、肌状態を健やかに保つためお腹も乾燥しないよう保湿をしっかりとしましょう。
効果が期待できる成分
なお、厚生労働省により美白効果が認められている成分は約20種類ほど。参考までに、代表的な成分を見てみましょう。
- エナジーシグナルAMP
ターンオーバー周期に着目した成分で、新陳代謝を活性化する効果もあるためメラニンの蓄積に効果があります。 - ハイドロキノン
集中美白ケア用品によく含まれているため、聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。自然由来の成分ですが、メラニン色素自体を淡色化しつつ合成を抑えてくれます。 - ビタミンC誘導体
ビタミンCを皮膚内に浸透しやすいよう改良したものがビタミンC誘導体です。新陳代謝をアップしてメラニンの排出を促進してくれます。
ただし、敏感肌や乾燥肌の人には刺激を与えてしまうこともあるので注意しましょう。
この他にも様々な成分がありますが、迷ったときは医薬部外品を選ぶ、けちらず使えて継続しやすい価格帯のものを選ぶなど、条件を絞ると良いでしょう。
対策3:美容医療を利用する
正中線はいずれ消えるものですし、上記のケアも有効ではあるものの、すぐには消えてはくれません。また、時間が経っても思いのほか正中線が薄くならず悩んでいる人もいます。
そんな場合は美容医療を利用するのもひとつの手。最近では産後美容に力を入れているクリニックも多くあるので、一度カウンセリングを受けてみると良いかも知れません。
レーザー治療やケミカルピーリングといった手法での改善が見込めます。
まとめ
美容意識の高まりにより、産後の美容ケアに力を入れる人も増えてきました。妊娠線を意識してケアに励む人は大勢いますが、正中線の存在を知らない人は意外と多くいます。
妊娠線と違いいずれ消えるものではありますが、やっぱり気になりますしなるべく早くなくなって欲しいですよね。
ホルモンに由来するものであるため妊娠線と違い予防が難しいものの、着実に薄くなるものなのでなるべく気にしすぎないようにして過ごしましょう。
濃淡には個人差がありますが約半年で薄くなりますので、保湿をしながらエクササイズなどもしてお腹のリメイクをしましょう。