【専門家監修】授乳トラブル「乳腺炎」とは?症状・原因・対処法を解説

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ヘルスケア

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。

おっぱいに関する悩みのうちのひとつ「乳腺炎」は、どんなものかは知らなくても名前は聞いたことがある、という人も多いのではないでしょうか?乳腺炎の症状はひどくなると発熱や痛みを伴うのですが、実は早めの対処ができれば軽く済ませることも可能です。

そこで今回は重症化を防ぐために必要な、原因や症状、対処法といった情報をまとめてみました。初産の人はもちろん、母乳の出が良くなる経産婦の人にも乳腺炎のリスクはあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

乳腺炎には2つの種類がある

乳腺炎が起こる原因は大きく分けて2つあり、症状も異なります。中には併発してしまうケースもあるのですが、それぞれ適切な対処法も変わるので、見分けられるように特徴を押さえておきましょう。

乳腺の詰まりによる炎症(うっ滞性乳腺炎)

1つ目は、母乳の通り道である「乳腺」に母乳が溜まり乳腺炎になってしまうというもの。この場合は「うっ滞性乳腺炎」と呼ばれます。

  • 母乳の需要と供給が見合っていない(母乳分泌過多)
  • 赤ちゃんがうまくおっぱいを吸えていない(飲み残し)
  • 乳腺が詰まっている

などの状態が続くと古い母乳が乳腺に残り続け、そこから炎症が発生してしまいます。
症状は、自分でも気づきやすいものばかりなので、授乳前後のタイミングで普段と違う様子がないかチェックするようにしてみましょう。早い段階で正しくケアできれば、重症化せず落ち着くことも多いですよ。

代表的な症状
  • 乳房の腫れ
  • しこりができる
  • まだらや放射状の赤みが出る
  • 触ると少し熱っぽいmastitis2

細菌感染による炎症(急性化膿性乳腺炎)

もう一つのケースは、傷口からの細菌感染で起こる乳腺炎です。こちらは「急性化膿性乳腺炎」といい、症状が重くなると身体全体にトラブルが出てきてしまいます。

  • 発熱
  • 寒気
  • 関節痛
  • だるさ
  • 頭痛

経験のある人は、インフルエンザのような症状と言うとピンと来るかもしれません。起き上がることすら難しくなり、赤ちゃんのお世話が出来なくなってしまうケースも。
授乳時は赤ちゃんに噛まれてしまったり、含み方が浅かったりして、乳頭が切れてしまう人が少なくありません。加えて、連日の寝不足やストレスで免疫力が下がってしまうことも一因です。
乳腺炎は風邪や怪我とは違って、放置しても良くならない場合がほとんど。なので、症状を感じたらすぐに対応することが大切になってきます。

併発の可能性もアリ

どちらか一方だけではなく、2つの種類を併発してしまうこともあります。うっ滞性乳腺炎を起こしている状態は細菌に感染しやすいですし、急性化膿性乳腺炎で体調が悪いと授乳の回数や量が減ってしまいやすいためです。
つい我慢してしまう性格の人や、身近に相談できる相手がいない環境だと、乳腺炎を併発させてこじらせてしまう傾向が強まります。授乳期間中は無理をしない、させないように心がけましょう。

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かかりやすい時期は?

乳腺炎は、産後10日∼3か月の期間になる人が多いと言われています。赤ちゃんが生まれてライフスタイルが変わり、疲労が蓄積してくる時期ですね。
また、お世話に慣れてきて授乳の間隔が空き始める生後6か月以降も要注意。離乳食が順調に進んでいる、赤ちゃんと母親が離れて過ごす時間がある、といった場合は特に気を付けてください。
入浴時や朝の着替え、授乳時などに乳房の状態を確認する習慣を作れるといいでしょう。

ちなみに、卒乳のときに乳腺炎になる人もいます。赤ちゃんが飲まなくなった母乳を絞り出してあげる必要があるのですが、その加減が難しいためです。
張りがひどい、痛みがある、なんてときは早めに助産師外来や母乳外来、乳腺外来がある産婦人科や助産院などに相談してください。

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乳腺炎になってしまったら…

乳腺炎は正しい対処を取ればそんなに怖いものではありません。ただし、知らずに長期間放置してしまうと悪化してしまうので、知識として症状やケアの方法を知っておくことが大切です。

授乳は続けるのが基本

乳腺炎になってしまったら、とにかく母乳を乳腺に残さないようにすることが大切です。母乳は乳腺炎になっていても変わらず飲ませられるので、赤ちゃんにどんどん飲んでもらいましょう。このとき、母乳を吸い出す圧は下顎側のほうが強いので、しこりや腫れに赤ちゃんの下顎が来るような角度で授乳するのがコツです。
抱っこしながらだけでは体勢的に難しいので授乳クッションや添い乳も活用しながら工夫し、熱感がある時はアイスノンや保冷剤で冷やしてもよいでしょう。

授乳・マッサージのコツ

顎の向きに気を付けて授乳してもあまり改善が感じられない場合は、飲ませながら軽く乳房を押さえる、さする、といった方法も有効です。乳首に向かって乳腺の流れを良くするようなイメージで、優しくするのがポイント。加減が強すぎると赤ちゃんがむせてしまったり、痛みが増したりしてしまう可能性もあるので気を付けましょう。
もし、赤ちゃんの飲みがよくない、授乳ができない、という場合は手絞りや搾乳器を使う方法もあります。
ただし、絞り続けるとどんどん母乳が作られ出続けてしまうので、ほどほどで終わらせるようにすることもポイントです。一番の搾乳器は赤ちゃんだと思ってください。
何度か絞ったり吸わせたりしても乳房の状態に変化が見られないときは、助産師などの専門家に直接相談するのがベストです。

乳首ケアの方法

白斑と言い、乳頭に分泌液がたまって栓をしてしまい、乳腺の詰まりを引き起こすこともあります。白っぽい塊を目視で確認できるので、授乳の前後にチェックをしてみましょう。ただし、もし見つけてもゴシゴシこすったり、つまんだりしないように。
蒸しタオルや入浴などで乳頭を温保湿して柔らかくすると、授乳時に自然と取れることが多いので試してみてください。

また、細菌感染を防ぐためには、乳首が切れないように保湿やマッサージをすることが大切です。授乳の前や入浴時などに乳輪から優しくつまむようにほぐしてみましょう。お腹の張りがなければ、妊娠中から少しずつ始めておくのがオススメです。
しかし、マッサージをしていても乳首が切れてしまうことは珍しくありません。授乳の度に痛みが出て辛いのはもちろん、傷から乳腺炎にも繋がりやすいので、我慢せずケアするべき。ピュアレーンやランシノーといった保護クリームを使用しましょう。

乳腺炎は繰り返す人が多い

実は、乳腺炎は何度も繰り返してしまう人が多いんです。でも、早めに対処できれば軽くて済むので、一度でも経験したことのある人はマメに乳房の状態を確認するようにしましょう。
また、体力が落ちているときも乳腺炎になりやすいので、家事や仕事で無理をせず予防することも大切です。

食事内容との因果関係は証明されていませんが、詰まりにくい母乳を作るためには脂っこい食事を控え水分をしっかり取るように心がけるといいそうです。
乳腺炎予防のハーブティーもありますので、繰り返す人はこうしたものを飲用して予防するのもよいでしょう。

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また、ブラジャーのサイズが関係しているという説もあります。妊娠中から産後しばらくはサイズアップするのが普通なので、ゆったりしたハーフトップタイプのものや乳帯をするとよいでしょう。

受診の目安は?

乳腺炎での受診は、炎症の種類や程度によって診察内容が変わります。軽度なら触診だけで終わることもありますし、急性化膿性乳腺炎の場合は血液や画像検査をすることもあります。極めてまれですが、溜まってしまった膿をチューブや切開で出すこともあるそうです。

基本的には、しこりや赤みに気づいたらまず電話で相談するのがオススメ。自覚症状を伝えてケアの方法をアドバイスしてもらい経過観察することがポピュラーです。その後、1日様子を見ても改善しないなら迷わず受診してください。

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まとめ

乳腺炎は、予防することがまず大切です。授乳期間中は昼夜問わず赤ちゃんのお世話をすることになるので、それ以外の時間はゆっくり休み、体力を温存しましょう。
それでも乳房に違和感を覚えたら、早めにケアや受診をするのがポイント。放置するとどんどん悪化してしまうので、治りが悪いと感じたら迷わず専門家に相談してくださいね。

専門家コメント
乳腺炎はなりやすい人となりにくい人はいますが、なってしまうとメンタルも落ち、楽しいはずの授乳が辛くなりますので、予防と早期のケアが大切です。普段からフットボール抱きなど色々な角度から飲ませておくのも予防の第1のポイントになります。
日頃から母乳外来や助産師さんに乳房の状態をみてもらえるような育児相談などにも参加しておくと、いざの時に頼りになります。
1年以上ある授乳ライフ、トラブルなく過ごせるとよいですね。

【監修】浅井貴子 先生

浅井 貴子(あさい たかこ)東京都在住フリーランス助産師 大学病院、未熟児センター勤務ののちフリーランスとして活躍。現在近隣の行政で、母親学級、育児相談、年...

プロフィール

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