【専門家監修】妊娠中の運動のメリット&妊婦におすすめエクササイズ

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
妊娠中運動しておいたほうが良いとは聞くものの、どんなメリットがあるのか、どんな動きなら行って良いのか、動いていいのはいつからなのか、お腹の赤ちゃんへの影響を考えると疑問が尽きませんよね。
本記事では、妊娠中の運動に関する情報を扱っています。自身と赤ちゃんの健康に是非役立ててください。
妊娠中に運動をしたほうがいい理由
そもそも、妊娠中に運動することでどういったメリットが得られるのか今ひとつわからない人もいるのではないでしょうか。
妊娠中の適度な運動によってどんな効果が期待できるのか見ていきましょう。
メリット1:体重管理
妊娠することにより体の状態は大きく変化します。食欲が過剰になることもしばしばあることですが、胎児の成長に合わせて適切な体重の増加となるよう管理をしなくてはいけません。
妊娠中に過剰に体重が増えてしまうことで妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの疾患にかかるリスクが高まるうえ、胎児にも発育不全などの影響が出てしまう可能性が出てしまいます。運動により行き過ぎた体重増加を防止することで、それらのリスクを低下させることができます。
メリット2:妊娠線予防
妊娠線ができてしまう原因のひとつとして、急激に皮膚が引き伸ばされることが挙げられます。胎児の成長に伴いお腹が大きく膨らみますが、皮膚がその膨らみについていけず皮下組織が断裂してしまうことで妊娠線ができてしまうと考えられているためです。
運動し筋肉の衰えを防ぐことで、筋肉が天然のガードルとなり急なお腹のせり出しをある程度抑えてくれるため、妊娠線ができにくくなるとされます。

メリット3:マイナートラブルの予防・改善
ホルモンや血液量が変化する妊娠中は、むくみや便秘、腰痛といったマイナートラブルがつきもの。
運動により体を動かし筋肉を保持することにより、血行を促す・腸の蠕動を促す・腰をサポートするなどの効果が期待でき、マイナートラブルの軽減へとつながります。
メリット4:出産・育児への体力づくり
出産は富士登山ほどの体力を消耗します。予め出産に備えて体力をつけておかないとお産の途中で疲弊しすぎてしまいいきむ力が弱くなり、難産になる可能性が出てきてしまいます。効率よくいきむためには、下半身であるお腹周り・お尻周りの筋肉や背筋も必要です。
また、産後は出産でダメージを受けた体を回復させながら赤ちゃんのお世話をすることになります。基礎的な体力をある程度つけておくことでその大変な時期を乗り越えやすくするとともに、いわゆる「産後の肥立ち」が良くなると考えられています。
メリット5:赤ちゃんの脳の発達を促す
カナダの大学での研究により、妊娠中に適度な運動を行った母親から生まれた赤ちゃんは、運動をしなかった母親から生まれた赤ちゃんと比べて、脳がより発達している傾向にあることがわかりました。
母体だけでなく、胎児にも良い影響があるのは非常に嬉しいですよね。
参考:Exercise during pregnancy may boost baby's brain development
メリット6:ストレス解消
妊娠中は以前のように行動できなかったり、体の変化に戸惑ったり、気持ちが下向きになってしまうことも。
ですが体を動かすことでセロトニンという心を安定させる働きを持つ神経伝達物質が分泌され、マタニティブルーやうつの予防効果も期待できます。
いつから運動していいの?
妊娠中に運動することでたくさんのメリットがあるのがわかりましたが、まず気になるのはいつから運動して良いのかということですよね。
いくら運動そのものに良い影響があるとはいえ、自身と胎児にもしものことがあっては…と不安に思って踏み出せない人もいるのではないでしょうか。もちろんつわりなどがある場合は無理をせず過ごすべきですが、特にそういった症状もない場合、余計に運動して良いものか悩んでしまいますよね。
近年では、先天的な染色体異常ではなく仕事や運動で流産することはほぼないと言われていますが、安定期に入るまではやっぱり不安に思うもの。いずれにせよとにかく自己判断はせず、主治医にしっかり確認を取って始めるようにしましょう。
日本マタニティフィットネス協会のガイドラインでは、妊娠14週以降なら運動してよいと指針が出ています。
ヨガやスイミングなどの教室に通う場合は、妊娠14週以降であっても医師の診断書の提出を求められることも珍しくありません。
妊娠中にしないほうがいい運動
運動であればなんでも体に良い!というわけではありません。運動強度や動作が負担にならないようにしましょう。
転倒の可能性があるもの
ウインタースポーツやサイクリングのような、バランスを崩して転倒する可能性のあるスポーツはやめておきましょう。サイクリングは転倒の危険性があるだけでなく、振動が子宮に伝わりやすい・漕ぐことで腹圧がかかりすぎるなどのデメリットがあります。
バスケットボールやバレーボールなど、ほかの人とぶつかることがある競技も転倒の可能性があるためNGです。
登山やハイキング
足元が悪い道を進むことが多く、体調を崩してもすぐに処置を受けることが難しい場所であることが多いため控えましょう。
激しい運動
テニスや陸上競技など、走ることが多く飛んだり跳ねたりする種目も体に負担がかかります。心拍数も上がりやすく、無酸素運動は胎児に酸素の供給が行き届かなくなるため良くありません。
他人と競う種目はつい白熱して動いてしまいがちなので避けるようにしましょう。
腹部に負担がかかる運動
例えばゴルフなどは走ったり跳んだりすることもなく一見問題がなさそうに思えますが、思いのほか運動量が多いうえに腹部を大きくひねる動きをしなくてはいけないため、妊婦には不向きです。
卓球や過度の筋トレも同様です。
妊娠中におすすめの運動4選
無理のないペースでできる有酸素運動が妊娠中には最適です。マタニティエクササイズとして人気の種目を紹介します。
おすすめ1:マタニティヨガ
通常のヨガは妊娠中には避けたほうが良いポージングなどがありますが、マタニティヨガは妊婦が行うことを前提にカリキュラムが組まれています。ヨガを通してお腹の赤ちゃんとコミュニケーションを取ることをイメージしながら、リラックスして取り組むことができます。
また、ヨガ特有の呼吸法は分娩時の呼吸に役立てることができるのも人気の理由のひとつ。股関節の柔軟性も上がり、分娩の姿勢が取りやすくなるというメリットもあります。

おすすめ2:マタニティアクア・マタニティスイミング
温水プールで浮力を利用して行うため、体を冷やすことも体に負担をかけることもなく効率的に運動をすることができるのが特徴。こちらもマタニティヨガと同じく股関節の柔軟性の改善と呼吸法の習得が期待でき、水圧によりむくみが軽減すると評判です。
泳ぐことよりもエクササイズに近いメニューだったり、初心者にも適切に指導してくれたりするところもたくさんあるので、水泳が苦手で避けてきたという人もチャレンジしてみると良いのではないでしょうか。

おすすめ3:ウォーキング
ヨガやスイミングよりも手軽に取り入れられるウォーキング。シューズやウェアを揃えて本格的に取り組むだけでなく、家の近所を散歩する、スーパーまで歩くなど、日常生活のなかに取り入れることから始められるのが何より魅力的です。
妊娠するまで有酸素運動をほとんどしてこなかったから、なにから始めていいかわからない…という人にもおすすめです。まずは15分間歩くことから始めてみましょう。
ただダラダラ歩くのではなく、背筋を伸ばして腕を前後にしっかり振って歩くことで効果が上がります。
夏の炎天下では日中の屋外運動は熱中症になるので禁止です。冬の寒さが厳しいときはもちろんのこと、雨が降っているときも体が冷えやすく、足元が滑りやすくなっているのでお休みしましょう。

おすすめ4:ストレッチ
外出する必要がなくスキマ時間にできるのでウォーキングよりさらにお手軽です。
運動強度こそ低いものの体に負荷がかからず、凝り固まりがちな妊娠中の体をほぐして柔軟性をアップさせるとともに、血流の改善も見込めます。妊娠中は足がつりやすくなっているので、ふくらはぎをストレッチしたり足首を回したりする運動などは特におすすめです。
両親学級などでも妊婦体操などのストレッチ法を教えてもらえることも多く、インターネットで動画なども参考にすることができます。専門の書籍も発売されているので手にしてみるのも良いでしょう。

注意点
母子の健康のために運動を取り入れるわけですから、運動することで体調を崩したり怪我をしたりしてしまっては本末転倒になってしまいます。
- 担当医にどの程度運動をしても良いか確認する
- 運動中にお腹が張る、痛む、気分が悪くなるなどの異変があったら即中止する
- 外出の際は母子手帳と診察券を携帯する
- 体調が思わしくないときはお休みする
上記は最低限守りましょう。
ヨガやスイミングなどの教室に通う場合は、必ずマタニティ向けコースを選んでインストラクターの指示に従いましょう。
まとめ
妊娠中に体を適度に動かすことで、たくさんのメリットが得られます。
もともと体を動かすことが好きだった人はもちろんのこと、これまで運動をほとんどしてこなかったという人も、これを機になにか始めてみるのも良いでしょう。
仕事をしている時でも、お休みの土日にはご主人様とウォーキングをするなどをすれば、ひとりで動くよりもより安全です。
貧血の人は立ちくらみなどもあるので鉄分を摂って治療しながら運動するようにし、こまめな水分補給も忘れずにしましょう。