【専門家監修】つわり、いつからいつまで続く?対処法や体験談を紹介

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
妊娠した多くの女性が最初に経験する苦労といえば、やはり「つわり」ではないでしょうか。つわりが始まることで妊娠に気づく人も少なくありません。
妊婦の大半がつわりを経験するとされ、その症状も重さも様々ですが、人によっては入院するほどひどくなってしまう場合もあります。
そもそもなぜつわりは起きるのか?いつからいつまで続くのか?緩和する方法はあるのか?意外と知らないつわりについての情報を、アンケートにより寄せられたエピソードを交えて紹介します。
(アンケート実施期間:2020年2月25日~3月1日 妊娠中・産後の女性963人が回答)

目次
そもそもなぜつわりは起こる?
つわりが起こるメカニズムは、実は現代でもはっきりとは解明されていません。ただ、内分泌系と自律神経系と免疫系の3つの要素が絡み合い発生すると考えられています。
原因1:内分泌系
まず挙げられる要因として、内分泌系、つまりホルモンの問題があります。
妊娠することによりホルモンのバランスは大きく変動しますが、着床直後からのちの胎盤となる組織の一部から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの存在が、つわりに大きな影響を与えているとされます。
なお、妊娠検査薬はこのホルモンを検出することにより妊娠を判定する仕組みです。
hCGは妊娠状態を継続させるために卵巣を刺激し、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を促す役目を持ちます。これらのホルモンは嘔吐中枢を刺激してしまうため、吐き気や食欲不振、嘔吐などがつわりとして表れるというわけです。
また、甲状腺もhCGに刺激されホルモンを分泌します。甲状腺ホルモンが増加することにより脈拍が増加し、疲れやすくなったり気分が不安定になったりといった影響が出ます。つわりの重い人ほど甲状腺ホルモンが多く分泌されているとされています。
原因2:自律神経系
これらホルモンの働きは自律神経とも大きく関係しているため、ホルモンバランスの変動に伴い自律神経の乱れが目立つようになります。
また、妊娠に伴う環境の変化に対するストレス、不安やプレッシャーなどの心理的な要素も自律神経を乱す一因。
自律神経が乱れてしまうと、食欲不振や吐き気、下痢や便秘など消化器系の不調や、頭痛や倦怠感、のぼせ、情緒不安定など、あらゆる不定愁訴が見られるようになります。
原因3:免疫系
胎児は母体のなかで育ちますが、別の個体であることから異物と見なされ免疫系から攻撃されてしまうことを防ぐために、妊娠中の女性は免疫力が低下すると考えられています。
しかし、妊娠初期は、赤ちゃんの体の重要器官が作られる大切な時期。免疫力を低下させることで妊娠状態を安定させることはできても、有害な物質やウイルスへの抵抗力が弱まってしまうリスクが発生してしまいますよね。
そこで、いちばん異物が侵入しやすい食べ物からの経路をつわりを起こすことで制限し、それにより免疫力の低下をカバーして安定期に入るまでの安全と発育を確保している、という見解が近年広まっています。
赤ちゃんの体の基礎ができあがる安定期までつわりが続くことを考えると、たしかに理に適っている説ですね。
つわりはいつからいつまで続く?
つわりの主な原因とされるhCGは、妊娠5週(妊娠2ヶ月目)ごろから急激に分泌量が上昇し、8~10週(3ヶ月目)ごろにピークを迎え、15週(4ヶ月目)ごろから落ち着き始めるとされます。つわりは、それに比例して出現・消退すると考えられています。
つまり、妊娠に気づく2ヶ月目ごろから体調に異変が出始め、3ヶ月目でピークを迎え、安定期を迎える4ヶ月目ごろから徐々に治まる…というパターンが一般的。
ですが、まれに妊娠後期に吐き気に悩まされることがあります。
それらは「後期つわり」と呼ばれることがありますが、胃が子宮に圧迫されたり、ホルモンの影響により胃と食道の境目の筋肉がゆるんで胃酸が逆流しやすくなったりといった要因によるもので、医学的にはつわりには分類されません。
では、アンケートの回答を見てみましょう。
【アンケート結果】いつから始まりましたか?
回答:930
やはり妊娠2ヶ月目以降がダントツに多いですね。生理の遅れとともにつわりが現れたことで妊娠に気づいた人も多いのではないでしょうか?
【アンケート結果】いつごろ治まりましたか?
およそ8割近くもの人が安定期に入ったに落ち着いています。中にはやはり「後期つわり」に悩まされたという人もちらほら。
つわりと妊娠悪阻の違いは?
つわりは妊娠中期に差し掛かるころには解消するものであり、病気に分類されることもありません。しかし、あまりに重いつわりは『妊娠悪阻(にんしんおそ)』という治療が必要な診断が下されます。
妊娠悪阻は、ほぼ毎日数回嘔吐する、体重の減少が続くなどの症状がある場合に疑われます。問診と尿検査と体重測定を行い、歩けない、ふらふらする、体重が5kg以上減るなどの場合は『重症妊娠悪阻』と診断され入院加療が必要になります。
診断が出るため保険も効き、傷病手当金の申請対象になります。

【アンケート結果】つわりを医療機関に相談しましたか?
特に医療機関につわりを相談しなかった人が56%なのに対し、入院治療を受けた人は3%。更に、入院はしなかったもののつわりがひどくそのためだけに受診した人もいます。それらを併せると、約10人に1人の計算でかなり重いつわりに悩まされたということになります。
また、妊婦健診の機会を利用してつわりに関する相談をした経験のある人もかなりの数です。多くの人がつわりに悩まされたことがよくわかりますね。
つらいつわり、楽にする方法はある?みんなの体験談もチェック
いずれ良くなることがわかり切っていて入院するほど重くないとしても、つわりがつらいことに変わりはありませんよね。
一般的なつわり対策として効果があるとされる方法はいくつかあります。アンケートの際寄せられた体験談とともに参考として紹介しますので、実践する場合は医師に相談してみましょう。
対策1:薬を処方してもらう
何も食べられないとか、食べると吐いてしまうとかはなかったけど、食欲は落ちた。食べたら気持ち悪くなる、何も食べなくても気持ち悪くなるので、何をどれくらい食べたらちょうどいいのかわからなかった。また、起き上がると頭痛もあって辛かったので、妊健時に相談して薬をもらって対処した。
いちばん手っ取り早くて確実なのは、薬を処方してもらうこと。つわりそのものを解消する薬はありませんが、妊娠していても飲める吐き気止め薬を処方してもらうことは可能です。
妊娠悪阻でなくても出してもらえますし、用法用量を守って薬に頼ることはなんら悪いことではないので、吐き気がつらいときは医師に相談して処方してもらいましょう。
対策2:ビタミンB6を摂取する
なるべく早期からビタミンB6を積極的に摂ることで、つわりが軽減するケースが多く見られます。安全かつ効果的な療法と考えられており、制吐剤を処方するまえに摂取を指示されることもあるようです。
妊娠を計画している段階から、葉酸とともに予防として摂取しておくようにするのも良いでしょう。

対策3:食べられるときに食べられるものを食べる
フライドポテトを毎日食べてました!
トマトやレモンがとっても美味しく感じてずっと相棒でした!
イカの一夜干しが無性に食べたくなって、イカの栄養素を調べたところ、タンパク質が豊富だと。バナナやアセロラジュースを欲したので栄養素を調べたところ、葉酸やビタミンB6が豊富と。自然と身体が欲するのが面白かったです。
妊娠中は自分自身はもちろんのこと、お腹の赤ちゃんのためにも栄養をしっかり摂らないといけないと思いつめがち。もちろん、栄養バランスに優れた食事を摂るに越したことはありませんが、つわりに苦しんでいるときにまで実行する必要はありません。
無理に食べることで症状が悪化したり、食べること自体がストレスになり精神的にも悪影響になってしまいます。
今まで通りの1日3食にこだわらず、食べられそうなときに食べたいものだけでも食べられれば上出来です。フライドポテトにケチャップをつけたものだけ食べられた、など栄養バランスは二の次で大丈夫。
もちろん、あまりになにも飲食できないようなら妊娠悪阻として治療が必要になるので、必ず医師に相談してくださいね。

対策4:ショウガを摂取する
つわりの軽減にショウガが効く、と聞くと疑ってしまいそうになりますが、西洋では古くから用いられてきた対処法であり、東洋では吐き気止めの漢方薬に生薬としてショウガが配合されます。現代においても効果は臨床試験でも実証済みで、ビタミンB6と同等の効果が得られることがわかりました。
参照:A randomized controlled trial of ginger to treat nausea and vomiting in pregnancy. - PubMed – NCBI
知られている通り、体を温める効果があるのも冷えが大敵の妊婦には大きなメリットです。料理に薬味として用いるのはもちろんのこと、ジンジャーティーなど飲み物での摂取もおすすめです。スーパーで安価に手に入る食材で吐き気が軽減されるなら嬉しいですよね。
対策5:枕元に軽食を置いておく
朝起きる時に、悪阻で気持ち悪すぎて、旦那さんにパンを口に入れてもらっていた!
つわりは英語でmorning sicknessと言いますが、これは起床時に症状が強く出ることが由来となっています。
朝症状が重くなる要因として、空腹により低血糖状態になっていることが挙げられます。妊娠中は胎児に糖分がエネルギー源として優先して回されてしまい、母体は血糖値が下がりやすい状態です。血糖値が下がると吐き気が出やすくなるため、空腹である起床時はつわりが強く出てしまうというわけです。
あらかじめ枕元にパンやクッキーなどを置いておくことで、起床後にそれらを食べて血糖値をある程度上げてから起き上がるようにすると楽になることが多く、食べづわりの人に有効です。
千差万別!つわりに関するエピソード
症状の出方や重さは実に人それぞれ。そこで、寄せられたつわりに関するエピソードの一部を紹介いたします。
妊娠判明直後位から主に吐き気と匂いに敏感になりました。シャンプーやボディソープなどの匂いに敏感になり、お風呂用品を一式変えました。温かさも相まってお風呂が苦痛でした。飲食店で働いていたので常に吐き気との闘い!常に袋を忍ばせて仕事をしていました。
妊娠8週~18週まで重症妊娠悪阻で2ヶ月半入院し点滴治療をした。臭いとハンバーグ等のジューシーで美味しそうな映像がダメで嘔吐していた。助産師さんが、つわりがあるってことは赤ちゃんが元気な証拠、必ず終わりは来るからと励ましてくれ、入院期間を乗りきれた。
常に船酔いしてるような感覚があり、空腹になるとさらに気持ち悪くなりました。あとは柔軟剤、芳香剤、香水の匂いや食べ物の匂い、人の匂いも受け付けなくなり、朝の電車通勤時はかなり辛かったです。
嘔吐はしないものの、1日中吐き気があり食事が摂れませんでした。体重が日に日に落ちていくので、産婦人科を受診すると、点滴をしてもらえた。また、ビタミンB6やつわりに効く漢方を処方してもらいました。悪阻は個人差が大きく、気の持ちようなどと言われることもありますが、辛いときには我慢せず医療機関を頼ることも必要だと思いました。
味覚の変化とともに多く寄せられたのが、嗅覚の変化に関する経験談。それまで好きだった匂いすら一気に受け付けなくなるのはかなり堪えます。食べ物と違い、匂いは息をするだけで不意に嗅いでしまうので参ってしまいますよね。
1人目(女)が1番重く、2人目(男)、3人目(男)の順でどんどん軽く感じた。
1人目は眠り悪阻、2人目は吐き悪阻、3人目は食べ悪阻です。ただ共通してたのは出産までガラガラうがいが出来ませんでした。
また、複数回妊娠を経験した人たちのエピソードでは、その都度症状や度合が違ったという体験談が多く寄せられました。つわりに個人差があるのは知られていますが、妊娠のたび変化することに驚いた人もいるのではないでしょうか?
誰にもわかってもらえず孤独さも増してとても辛かったです。
夫がなかなか理解してくれず悲しかった。
つわりが辛かったのはもちろんですが、つわりでしんどい気持ちを周囲の人に理解してもらえないことがあったのがとても辛かったです。
症状とは別に、つわりに対する周囲の無理解がつらかったという声もちらほら聞かれました。個人差があるがゆえに、男性はおろか妊娠を経験した女性にすら理解してもらえないことも。
なにより、パートナーにわかってもらえないのはとても堪えますよね。周囲からのサポートがあることで心身ともに大きな支えとなるので、妊娠することで身体が大きく変化することを予め一緒に学んでおくと良いでしょう。
まとめ
つわりのあいだはなるべく水分をこまめに摂り、脱水症状を予防しましょう。また、歯磨きでも吐き気を催してしまうようならマウスウォッシュで済ませるなど、とにかく少しでも症状が出ないようにするようにしてください。
いっときの我慢とわかっていてもつらいのがつわりです。無理をしないで休息を取りながら過ごしてくださいね。
仕事をしている妊婦さんもまだ妊娠を公表していない時期などは辛い事と思います。通勤も時差出勤をしたり自宅で作業をしたりするなどフレックスな仕事の選択も視野に入れて、上手に乗り切ってください。
レモンやグレープフルーツのジュースやアロマなどを上手に活用して乗り切ってくださいね。