【専門家監修】溜まり乳とは?母乳が出続けるとどうなる?原因と対策

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ヘルスケア

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。

授乳を開始するとよく耳にするようになるのが、「差し乳」と「溜まり乳」ですよね。いずれも授乳を開始するまでは知らなかったという人も多いのではないでしょうか。
今回は、授乳開始後に多い「溜まり乳」にクローズアップしてお届けします。

溜まり乳とは?

はじめに、溜まり乳の意味を確認しておきましょう。差し乳と同様に、医学用語ではなく民間で使われてきた言葉です。

  • 普段から乳房が張りやすい
  • 授乳から時間が経過しなくても乳房がすぐに張る
  • 授乳を開始すると張りが落ち着く

上記のような、常に母乳が溜まっているという意味で溜まり乳と呼びます。特に産後すぐの人に多く見られるとされます。
例えば、授乳時以外でも母乳が溢れ出る、射乳反射が盛んであれば少し乳房に触れただけで母乳が飛び出す、なんてエピソードもよく聞かれますが、それも溜まり乳と形容される時期特有のものでしょう。

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なぜ溜まり乳になるの?

母乳が余るほど出るなら良いことだね、とポジティブに思われやすい溜まり乳ですが、張りによる痛み、衣類や寝具が濡れてしまう、勢い良く出てしまうため赤ちゃんがむせてしまうなどの悩みがつきものです。
では、なぜそんなにたくさんの母乳が分泌されてしまうのでしょうか?

産後すぐは産生量を模索している状態

溜まり乳が出産後から数ヶ月ほど続くケースが多いのは、体が母乳の適切な産生量をまだ把握できておらず需要以上に分泌するためだと考えられています。
あとは、脳下垂体から分泌されるプロラクチンという催乳ホルモンの数値が高い場合も、母乳分泌過多症になります。
妊娠中の段階から授乳に備え、乳房内では母乳を分泌するための細胞がどんどん発達していきます。産後はそれらがフル活動して母乳を作り出すため、どうしても母乳過多になってしまう傾向にあります。
授乳をすることにより適切な産生量を体が徐々に把握し、余分な母乳生成細胞が減ることで溜まり乳も落ち着いていきます。

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溜まり乳、放っておくとどうなる?

前述したように、産後しばらくは溜まり乳の状態が続きます。通常であれば1ヵ月ほどで少しずつ落ち着きますが、もしそのまま溜まり乳が続き、赤ちゃんの飲む量よりも多く分泌され続けてしまうようであれば「母乳過多」「過分泌」と呼ばれる状態となります。
「母乳がたくさん出るのは良いことだからそのままでもいいのに」と思ってしまうところですが、そんなことはありません。

母乳過多(過分泌)で赤ちゃんに出る影響

過分泌の状態なら赤ちゃんが存分に飲めてすくすく育つことができそうなイメージがありますが、適切な体重増加とは言えないほど急速に体重が増えてしまうのは問題です。
また、勢いよく母乳が噴き出すことにより赤ちゃんが適切なペースで母乳を飲むことができず、ときにはむせてしまい上手に嚥下できずちょこちょこ飲みになってしまいます。時間を空けず授乳の催促をして、すぐに飲むのをやめて…というローテーションに陥ることで、赤ちゃんの成長に影響が出てしまうこともあります。

授乳のはじめのほうに出る母乳はあとのほうの母乳と比較すると脂肪分が少なく、同じ量を飲んでも赤ちゃんが満足感を得にくいという特徴があります。また、はじめのほうに出る母乳はラクトース(糖)が多いため、赤ちゃんによっては消化ができず水っぽかったり緑がかったりした便をしてしまうこともあります。

母乳過多(過分泌)で母親に出る影響

乳房が張る不快感や痛みに悩まされやすくなるのはもちろんのこと、乳汁がうっ滞しやすくなるため乳腺炎になりやすいというリスクも抱えてしまいます。そうした肉体的な負担だけでなく、寝具や衣類に母乳が染みないよう対策し続けなくてはなりません。産後しばらく経ってもそれらが続くのはなかなかつらいものです。

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母乳過多(過分泌)の対策は?

対策1:授乳回数を減らす

授乳回数を無駄に増やしてしまうと母乳がさらに分泌されることに繋がるので、1回の授乳で赤ちゃんをしっかりと満足させる必要があります。
通常、1回の授乳で左右の乳房を交代で吸わせて母乳を飲ませますが、過分泌の状態でそれを行うと、赤ちゃんが脂肪分の高い母乳にたどり着けないまま満腹になってしまいます。その結果、授乳間隔を空けずにすぐ飲みたがってしまうことに。赤ちゃんの吸う刺激によりまた母乳が出てしまい、また母乳が多く分泌される…という悪循環になってしまいます。
授乳の際は、毎回片側の乳房のみ飲ませるようにすることで赤ちゃんがより脂肪分の高い母乳を飲むことができます。それにより満足感を得られるようになるため、授乳間隔を空けられるようになるはずです。

対策2:搾乳をしすぎない

乳房が張るとき搾乳をすると一時的に症状が治まり楽になりますが、生理学的に蓄えられていた母乳が排出されれば排出されるほど盛んに産生が進むため、頻繁に搾乳をし過ぎるのはおすすめできません。
それでもどうしても張りがつらいときは、授乳前に圧抜きをする、もしくは少量のみ搾乳をして症状を緩和するようにしましょう。授乳前にも行うことで母乳の出が少し落ち着き、赤ちゃんも飲みやすくなるというメリットがあります。
また、張っている乳房を保冷剤や冷湿布をして冷却すると、張りが若干抑えられますよ。

対策3:授乳姿勢を変える

見落としがちなのが授乳の際の姿勢です。
おすすめなのは、クッションなどにもたれかかって少しリクライニングしたような姿勢での授乳です。赤ちゃんが少しうつ伏せになって飲む格好になるため、たくさんの母乳が出ても赤ちゃんがむせにくくなり、落ち着いてしっかりと飲んでくれやすくなります。
また、いつも同じ姿勢で授乳していると、使われる乳腺や乳管が偏ってしまい他の部位で詰まりが起こりやすくなったり、乳首や乳輪の特定の箇所にばかり負担がかかり傷つきやすくなったりするため、それらを予防することもできます。横抱きだけでなくフットボール抱きや縦抱きなど、色々な方向から飲ませましょう。

対策4:専門家や代替療法に頼る

なにより効果的なのが専門家の力を借りること!
特に母乳過多の場合、周囲に相談しても「贅沢な悩み」などと言われてしまうことが珍しくなく、精神的にも落ち込みやすくなってしまいます。我慢して自己流で対処しようとして悪化してしまう人もいます。
かかりつけの産婦人科や助産師に相談し、きちんと専門的な処置やアドバイスを受けることで心身ともに楽になるはず。漢方などを処方してもらえるところもあるので、ひとりで抱え込まずに必ず医師や助産師を訪ねましょう。

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まとめ

産後すぐは「溜まり乳」の状態なのは普通のこと。頻繁に授乳をしつつ、何度も搾乳したり母乳パッドをしょっちゅう取り替えたりと大変な思いをする人がたくさんいます。
数ヶ月しても分泌量が引く気配がないようなら、改善に向けて専門家の指示を仰いでみましょう。

専門家コメント
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こういうものも上手に利用して日々の授乳生活を楽に出来るとよいでしょう。

【監修】浅井貴子 先生

浅井 貴子(あさい たかこ)東京都在住フリーランス助産師 大学病院、未熟児センター勤務ののちフリーランスとして活躍。現在近隣の行政で、母親学級、育児相談、年...

プロフィール

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