【専門家監修】産後の過ごし方!産褥期とは?期間や内容、注意点

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
産褥期(さんじょくき)という言葉を知っていますか?よく見かけるけど、具体的にいつどんな状態のことを指すのかは分からない…という人も多いのでは。
今回はそんな人のために、産褥期の意味や内容、注意点や過ごし方について紹介いたします!これから出産を迎える人はもちろん、産後いつまで休めば元通りになるんだろう?と悩んでいる人にも参考にしていただきたい内容です。
産褥期の定義や意味、期間は?
産褥期とは、「出産を終えた母体が妊娠前と同じくらいに身体の状態が回復するまでの期間」を指す医療用語です。ちなみに、産後のお母さんのことは褥婦(じょくふ)と呼びます。
「褥」という漢字は”しとね”とも読み、古くは布団などの敷き物を表す言葉でした。現代では褥瘡(じょくそう/床擦れのこと)など、医療系の分野で用いられることの多い文字となっています。
期間は6~8週間が平均
基本的に、産褥期は産後6~8週間くらいまで続きます。特に産後5~7日の間はお産の疲れがまだ残り、子宮の収縮も強い時期。そのため、産科に入院して医師や看護師、助産師による重点的なケアが必要不可欠です。
退院してからも、産後1か月半から2か月までが産褥期となります。病院を出たらすぐに元のように動ける、というわけではないので要注意。必ず、周りの協力を得られるよう、事前に準備をしておいてください。
体調の変化をチェック
妊娠中は約10か月もの期間をかけて少しずつ身体が変化していくのに対して、産褥期は1,2か月の短い期間に急激な変化が起こります。しかし、目に見える変化はあまり多くはないため、知識がないとピンとこない場合も。
具体的にどんな変化が起こるのか、これから確認していきましょう。
出産によるダメージ
陣痛や出産は、お母さんの身体に大きなダメージと疲労を与えます。例えば、骨盤の開きやゆがみ、会陰の傷などはほとんどのお産で起こるものです。
さらに、帝王切開や吸引・鉗子分娩、会陰裂傷など異常分娩となった場合は、もっと深く大きなダメージが生じます。回復に時間がかかるだけでなく痛みもしばらくの期間続くので、生活するうえで不便や不快を感じることもあるかも。
子宮が収縮する(子宮復古)
赤ちゃんを育てるために大きく膨らんでいた子宮が、妊娠前の大きさまで戻ろうとすることを「子宮復古」と呼びます。収縮のピークは入院期間中の産後3,4日ころですが、その後も少しずつ、6~8週間をかけて元の大きさや状態へ戻っていきます。この時、経産婦や多胎出産の場合は「後陣痛」と呼ばれる、鈍い生理痛のような痛みが出ることもあります。病院では鎮痛剤も処方してくれるので辛い時は遠慮しないで相談してみてください。
子宮が小さくなる時に、内部の残っていた胎盤や体液などが押し出される「悪露」のケアも必要です。これは分娩の方法や内容にかかわらずすべての褥婦に起こる物なのですが、何らかの原因で正常な子宮収縮が行われないと「子宮復古不全」という治療が必要な状態となる可能性もあります。
ホルモンのバランスが大きく変わる
出産を終えると、身体の中では妊娠や出産のために分泌されていた女性ホルモンの「エストロゲン」が急激に減少します。その結果、大量の抜け毛や肌荒れといったマイナートラブルを引き起こすことも。
ホルモンバランスが崩れることにより、メンタル面が不安定になるのも特徴的です。慣れない育児も重なり、極端に気分が沈む、不安を感じる、という人も珍しくはありません。
生活サイクルが激変する
生まれたばかりの赤ちゃんは昼夜を問わず寝たり起きたりを繰り返します。そして、その度におむつ交換や授乳などのお世話が必要になるため、母親はどうしても寝不足になりがち。さらに、トイレやお風呂、食事といった最低限の生活行動も、お世話の合間にタイミングを見ながら済ませることが多くなります。
外出の機会が極端に減るために、家族以外との会話が少なくなることも産褥期の特徴。結果、疎外感やストレスを感じてしまう人も少なくありません。
産褥期の過ごし方は安静に!
産褥期は、体力や身体の調子を取り戻すことが第一優先。最低でも1か月健診までは家事をお休みし、赤ちゃんのお世話に慣れることに専念しましょう。
ここで無理をしてしまうと、昔から言われている「産後の肥立ち」が悪くなります。身体を壊して再入院したり、マタニティブルーや産後うつを発症したりしてしまう場合もあるので、注意が必要です。
周囲の協力が必要不可欠
お母さんがしっかり休んで赤ちゃんのお世話に専念するためには、周りの理解と協力が欠かせません。様々な事情で難しいケースもあるとは思いますが、出来る限り、産褥期の家事はお母さん以外の人が担当してください。
- パートナーに数か月間の育休を取ってもらう
- 里帰り出産をする
- 家事代行サービスを利用する
中には、育休を取ったけど数日間だけだった、里帰りをしたのに普通に家事を手伝わされた、なんて声も…。そんな事態にならないよう、産後の生活については事前に家族間でしっかりと話し合うことをお勧めします。
また、家事代行サービスを利用する場合は出産前にも何度か利用して慣れておくと、産後もスムーズですよ。
無理せず、小まめに休んで
産褥期は少しでも疲れを感じたら、小まめに休むようにしてください。特に、赤ちゃんが寝ているときは昼夜を問わず一緒に寝るようにするのが基本です。
産後は体力が落ちてダメージも受けている状態ですが、一見すると病人やけが人には見えません。そのため、周囲からは「もう動けるんじゃないの?」なんて声が聞こえてくるかもしれません。
しかし、実際どれくらい疲れているのかは自分自身にしか分からないものです。
赤ちゃんの育てやすさやお母さんの体力にも個人差がありますから、人と比べることもNGですよ。
ちなみに、産後の身体はある日を境にして急に元通りになる、というものではありません。「〇日になったから妊娠前の生活に戻そう!」と急に動くのはとても危険。段階を踏んで少しずつ、家事やお出かけを増やすようにしてくださいね。
できれば食事内容にも気を配って
家事のできない状態ではバランスの良い食事を摂るのも難しいかもしれませんが、身体の回復をサポートしてくれる栄養素を意識して摂れるように努力してみて。
意識してほしい栄養素は「葉酸」「鉄分」「ビタミンC」「たんぱく質」「カルシウム」の5種類。食事から摂りにくい成分はサプリで補ってもOKです。
まとめ
産褥期のお母さんには、様々な変化が起こります。そのため、何よりもまず無理せず休むことが最優先。そして、しっかり休むためには家族の理解と協力が欠かせません!
この時期の無理は数年後、数十年後の体調不良に繋がるとも言われているので甘く見ないように。できれば、出産前に産褥期の生活について相談しておけるとベストですね。
コロナや介護になっていて祖父母に頼れない方も増えてきています。一番のサポーターは夫になりますので、育児休暇を取ってもらうよう妊娠中から働きかけておくとよいでしょう。