【専門家監修】前駆陣痛とは?症状や本陣痛との違い、対処法を解説

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
「前駆陣痛」は数多くある、妊娠・出産に関する専門的な用語の一つです。
名前だけ聞くと出産の直前に起こりそうな印象も受けますが、実際には”おしるし”と同じように起こるタイミングやその後の流れはバラバラ。
そこで、「前駆陣痛ってなに?」と不安や疑問を感じている方の参考になるように、解説付きで情報をまとめてみました。いざという時に正しく対応できるよう、ぜひ参考にしてみてください。
前駆陣痛とは?
そもそも陣痛にはいくつかの種類があり、主なものは下記の3つになります。
- 前駆陣痛
- 本陣痛
- 後陣痛
前駆陣痛とは、出産予定日が近くなると起こる不規則な子宮の収縮のことです。出産に向けた陣痛の練習とも言われていて、軽い痛みや違和感をともなうことが多いとされます。ホルモンの分泌によって子宮頚部を柔らかくするなど、身体の準備としての役割も担っています。
本陣痛は直接お産に繋がる陣痛で、後陣痛は産後の子宮が元に戻ろうとする”子宮復古”により起こるものです。いずれも子宮の収縮によって痛みが生じる点は共通していますが、起こる理由やタイミングは異なります。
前駆陣痛のタイミング
前駆陣痛は臨月の夜間に起こることが多いものの、全員に共通するわけではありません。回数も、1度だけの人もいれば何度も起こる人などそれぞれ。また、中には前駆陣痛が起こらない、気付かないまま出産を迎える人もいます。
直接お産には繋がらず、おしるしの有無とは関係なく起こるのも大きな特徴です。眠っている間に前駆陣痛が起こり、目が覚めてしまうなんてケースも。
痛みと症状は?
前駆陣痛は、痛みや症状も人それぞれです。よく言われる感覚を挙げてみるので、参考にしてみてください。
- 子宮が収縮してキューっと締まる感覚
- 生理痛のような腹痛
- 骨盤や下腹部がキリキリ、ねじれるような痛み
- 腰が重くなる、チクチクする
- お腹が張る
- 便意に似ている
子宮やその周囲に違和感が出る人が多く、胎動とは明らかに違う感覚になります。しかし、普段からお腹が張りやすい人からは「あまり違いが分からなかった」なんて声も。
前駆陣痛の症状は数秒から数分間だけで治まり、それが不規則に何度か繰り返し起こるものです。また、1日で終わる人もいれば、2,3日から1週間ほど続く人もいます。
痛みは我慢できないほどの強さではなく、普通通りの生活をしながら会話もできるくらいの範囲。タイミングによっては眠っていても目が覚めてしまう場合もありますが、痛みが引けば寝なおせるでしょう。
もし、これらに当てはまらず、痛みがずっと継続している、堪えられないほど痛みが強い、痛みの間隔が一定、などの症状があれば、前駆陣痛ではなく本陣痛である可能性が高いので、出産を予定している病院にまずは電話で相談してみてください。

前駆陣痛と本陣痛の違い
本陣痛と前駆陣痛の大きな違いは、痛みの出方と程度になります。
前駆陣痛の特徴
- 歩ける、喋れる程度の痛み
- 不規則に痛みが出る
- 痛みの程度はバラバラ
本陣痛の特徴
- 我慢できない、声が出るくらい痛い
- 一定間隔で痛みの波が繰り返す
- 痛みが徐々に強くなる
痛みの感じ方には個人差がありますが、前駆陣痛なら我慢できる範囲の人がほとんど。
また、本陣痛は数十秒間の強い痛みが10分程度の間隔で定期的に起こりながら間隔が短くなっていくのに対して、前駆陣痛は間隔も痛みもがバラバラです。
どちらか判断に迷ったら、メモやアプリで時間を記録するようにしてみてください。
見分けづらいケースもある
なかには、前駆陣痛だと思っていたらそのまま本陣痛に繋がるケースもあります。逆に、規則的な陣痛が来ていてもお産までは至らず、結果的に前駆陣痛という判断になる場合も。
判断に迷うときは病院に電話で相談してみてください。その時なるべく詳しく状況を説明できるように、痛みの間隔や症状を控えておけるといいですね。
ちなみに、専門家である助産師でも前駆陣痛か本陣痛かの判断が難しい場合もあります。妊婦さん本人が本陣痛かな?と思っていたのに前駆陣痛だった!なんてケースは珍しくはないので、予測と違っていても気にする必要はありません。
初めてのことで戸惑ってしまうかもしれませんが、なるべく慌てず冷静に、痛みや間隔を分析してみるのがポイントです。
前駆陣痛の対処法
前駆陣痛の痛みは本陣痛より軽いとはいえ、生理痛や腹痛のような痛みが出て辛いと感じる人も少なくありません。
- 痛みを和らげる方法
- ゆっくり深呼吸する
- 横になって休む
- 痛みのある部位をさする
- 湯船につかる
- 痛みから気をそらせる
痛みが辛いときは、リラックスできるような行動を取ることで症状が和らぐ傾向があります。また、好きな音楽を聞いたり、ゲームなどの趣味をしたりして気分転換するのもおすすめです。相手がいる場合は、おしゃべりすることで気が紛れることも。
前駆陣痛への対処法は、本陣痛の序盤でも役に立ちます。この機会に、自分に合いそうな方法をピックアップしておいてもいいですね。
破水したらすぐ連絡を
基本的には前駆陣痛が起こっても慌てる必要はありませんが、破水が起きた場合はなるべく早く病院へ行く必要があります。
前駆陣痛やおしるしと同じように、破水もタイミングや感覚は人それぞれです。風船が割れるような感覚がある人もいれば、特に感覚はなく起こる人もいます。尿意なくサラサラした水分が膣から出てきたらまず病院に連絡をして、指示を仰ぐようにしてください。
前駆陣痛は冷静に対応しよう
前駆陣痛は起こる人と起こらない人がいて、そのタイミングや回数、症状も人それぞれ。しかし、耐えられないほどの痛みにはなりません。身体が出産に向けての準備をしていると思って、冷静に対処するように心がけてみましょう。
痛みが強すぎる、長時間続く、破水した、判断に迷う、なんて時は分娩を予定している病院に連絡してみましょう。症状を元に、適切な対処法をアドバイスがもらえるはずです。
夜間に前駆陣痛が起きる場合が多いので、昼間はお昼寝などで体力を温存したり、体調がよければ積極的にスクワットやウォーキングなどで動いて本陣痛に持っていける場合もあります。産院の助産師さんにも相談しながら本番を迎えてください。