妊娠トラブルでも申請できる?覚えておきたい傷病手当金制度について
働く女性が妊娠したとき、産休に入るまでそのまま働きたくても体調を崩してしまう可能性は誰にでもあります。体調管理に気を配っていても、妊娠期の体は特殊な状態です。医師から安静を言い渡され、ひどいときには入院を余儀なくされることもあるかも知れません。
そうなると心配なのはやはり収入。有休でカバーすることができれば安心ですが、それができない場合もあるでしょう。
産休前にそうした事態になったとき、傷病手当金をもらえる対象になることがあります。
傷病手当金とは?
まず傷病手当金とは、業務または通勤が原因ではない、それ以外の怪我や病気により休まざるを得ないときに申請することができる健康保険の制度です。病気で長期休業することになった場合でも、最長で1年6ヶ月間支給されます。
正社員に限らずパートタイム・アルバイト・契約社員・派遣社員など雇用形態を問わず、勤続期間も関係なく申請できます。
インフルエンザにも適用することができるので、妊娠期のトラブルに関係なく知識として知っておくと良いでしょう。
受給条件
- 勤務先の健康保険における被保険者本人
- 業務外の傷病により、今従事している業務ができない状態と医師が判断し診断書が出ている
- それによる休業中に会社から傷病手当金より多い給与をもらっていない(傷病手当金より少ない金額が出ている場合は差額を受給できます)
- 傷病により4日以上休んでいる
ちなみに、「4日以上休む」というのは待期期間として曜日を問わず3日間連続で休んでいることが必要になります。待期期間は有給休暇を充てても問題ありません。
例1はずっと休業しているのでわかりやすいかと思います。例2は出勤をはさんでいますが、待期期間3日が発生しているので支給を受けることができます。例3の場合は連続した休みが2日しかないため待期期間として認められません。
もらえる金額
給付額の計算式は下記の通り。
標準報酬月額は、給与の金額や都道府県で変わります。下記のサイトで確認してみましょう。
なお、下記のサイトで給付額を算出することができます。
申請書を提出後、約10日間の審査を経て手続きに入ります。医師・会社・健康保険組合それぞれでの手続きや処理が段階的に進むため、振り込みまで1ヶ月ほど見ておきましょう。
妊娠中に傷病手当金の対象になる代表的な症状
妊娠は病気ではないため基本的には傷病手当金の対象外とされますが、いくつかの症状は医師から療養を言い渡されるため対象になります。労務不能、つまり業務を行うことができない状態であれば傷病手当金の対象になるため、入院か自宅療養かは問いません。
切迫流産
文字通り流産が差し迫っている状態です。多くの場合、トイレ以外はなるべく動かない絶対安静状態で過ごすよう医師から指示されます。
妊娠高血圧症候群
昔は『妊娠中毒症』と呼ばれていました。妊娠高血圧症候群が悪化して合併症を発症すると母体と胎児が危険な状態に陥る可能性も出てくるため、安静にするよう指示されます。
妊娠悪阻
つわりはただでさえつらいものですが、重症化し1日数回の嘔吐、体重減少、脱水症状などが見られると妊娠悪阻(おそ)と診断されます。点滴治療などを受けることになります。
子宮頸管縫縮術
子宮頸管無力症は何らかの理由により子宮に胎児を支える力が足りず臨月前に頸管が開いてしまい、早産や切迫流産の原因になるとされています。子宮頸管縫縮術では、分娩までの対処法として頸管を糸で縛る措置を施します。
代表的なものとして4つ挙げましたが、これら以外の症状でも医師に労務不能と判断されれば申請することができるでしょう。
注意点
産休前から休業しそのまま産休に入るパターンもあるかも知れませんが、産休期間に入ると出産手当金が優先されるため傷病手当金のほうはもらえなくなります。
もし傷病手当金より出産手当金の金額が低かった場合は差額を支給してもらえます。
なお、育児休業給付金は雇用保険の制度であるため傷病手当金と関係なく受給できます。
それ以外の保険や年金を受給したい場合も、必ず条件を確認しておきましょう。
まとめ
体調が悪くても、仕事が忙しかったり休むことで収入が減ったりすることに気が引けて、なんとか産休に入るまでは…と無理をしてしまう人もいるかも知れません。ですが母親にとって妊娠期は人生の中で1年にも満たない期間でも、生まれてくる赤ちゃんにとっては一生を左右する期間と言っても過言ではありません。
もちろん元気に産休期間に入るのがいちばんですが、どんなトラブルが起こるかわからない妊娠期にも、こうした手当金の存在を知っておくことで少しは安心できるのではないでしょうか。
なにかあったときは自分の体と赤ちゃんを最優先にすることを念頭に置いたうえで、絶対に無理をせず仕事をしましょう。