【専門家監修】切迫流産とは?知っておきたいその症状と原因、対処法

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
「妊娠は病気ではない」
本来であれば、「病気ではないから治療ができない」という文脈で使われるべき言葉が、「病気じゃないからいつも通り過ごすべき」、「つわりは思い込み」などの意味合いで使われることが少なくありません。
確かに妊娠自体は病気ではありません。しかし、妊娠中は様々なマイナートラブルが発生しますし、母子の命に関わる病気にかかってしまうことも。だから、妊娠中はいつもよりも自分の体調の変化に気を付けなければなりません。
そこで、今回は多くの妊婦が診断される可能性がある切迫流産について説明します。
切迫流産とは?切迫流産をわかりやすく解説
切迫流産とは、妊娠22週未満で出血や痛みがあって受診した場合の「呼び名」です。妊娠22週未満で「下腹部に痛みがある」「出血をしている」という状態で受診して、赤ちゃんの無事が確認された場合は、すべて切迫流産と診断されます。流産に切迫している状態、というとわかりやすいかもしれません。
切迫流産は「流産しかかっている状態」と説明されることが多いですが、このように痛みや出血がある場合に診断されますので、切迫流産と診断された人全てが流産しかかっているというわけではありません。
「流産」というワードが含まれているため、「切迫流産」と診断された人は落ち込んだり、焦ったりしてしまうと思います。でも切迫流産は流産ではないので、必要以上に落ち込まなくても大丈夫です。医師の話をよく聞いて、指示に従いましょう。
週数別、切迫流産の対処法
では、切迫流産と診断されたらどのような治療が行われるのでしょうか。切迫流産の治療法を、週数別に確認しておきましょう。
妊娠12週未満の切迫流産には明確な治療法がない
妊娠12週未満
妊娠12週未満の切迫流産のほとんどが、原因不明です。出血や痛みといった症状があっても診察で異常が見られることが少なく、治療法がない状態です。
切迫流産の治療について健康保険ではいくつかの薬剤が適用されているものの、流産予防効果はほとんどないとされています。また、ホルモン療法についても明確な流産予防効果は示されていないとのこと。
ただし、絨毛膜下血腫という状態になっている場合は、安静にしておくことで流産を予防可能とされています。絨毛膜下血腫と診断された場合は、医師の指示に従って安静にしておきましょう。
妊娠12週以降
妊娠12週以降の流産でも、母親が悪いということはありません。
妊娠12週以降の流産については、母体を治療することで進行を停止することができる場合も。飲み薬や点滴などで効果的な薬剤を摂取することで、流産の進行を止められる可能性があります。
これって切迫流産?突然の出血や腹痛に見舞われた場合の対処法
妊娠初期は、突然お腹が痛くなったり、出血したりといったトラブルが少なくありません。中でも出血は頻度が高く、多くの人が慌ててしまいます。そこで、妊娠初期の出血や腹痛の対処法を解説します。
胎児の心拍が確認されているときの軽い出血
妊娠12週未満で赤ちゃんの心拍が確認された後に出血があった場合、それが少量であれば夜間や時間外に慌てて受診する必要はありません。翌日に病院に電話した上で、受診すべきかどうかの判断を仰ぎましょう。
胎児の心拍が確認されていて、強い腹痛や大量の出血がある
妊娠12週未満で強く腹痛がある場合や、大量の出血が見られた場合は、休日や夜間であっても受診してください。進行性の流産やその他のトラブルが発生している可能性があります。
正常妊娠が確認される前の強い腹痛や大量の出血
検査薬等で妊娠反応が出たものの、子宮内での正常な妊娠が確認される前に強い腹痛や大量の出血がある場合は、「子宮外妊娠」(異所性妊娠)の可能性があります。
子宮外妊娠とは、卵管や卵巣など子宮以外の場所に受精卵が着床して育っている状態です。その場所で受精卵が成長してしまうと、卵管等が破れて大出血を起こしてしまいます。処置が遅れると母体に危険が伴うので、速やかな処置が必要です。
妊娠12週未満の流産は赤ちゃんのトラブルが原因
原則として、妊娠12週までの流産は母体ではなく赤ちゃんに何らかのトラブルが起きていることがほとんどです。染色体異常によるものが多く、治療をしても流産を止めることはできません。自然流産のほとんどが妊娠12週までに発生しています。ですので、流産してしまったとしても自分を責めないようにしましょう。
切迫流産以外の流産とは?流産の種類と切迫早産・切迫流産の違い
妊娠初期は、切迫流産だけでなく様々な流産のリスクがあります。切迫流産以外の流産の種類と切迫早産について解説します。
流産の種類
稽留流産
子宮内で胎児が死亡しているが、腹痛や出血などの症状がない流産のことです。自覚症状がないので、定期検診の超音波検査で心拍が確認できず発覚することがほとんどです。
稽留流産の場合は胎児が自然に排出されることもありますが、排出されない場合は手術によって処置を行います。
進行流産
出血が始まって、胎児や子宮の内容物が排出される流産です。腹痛や出血を伴います。
進行流産で、完全に子宮がきれいな状態になることを完全流産、一部の内容物が残っている状態を不全流産といいます。
切迫流産と切迫早産
切迫流産と似たような言葉で、「切迫早産」というものがあります。切迫早産とは、妊娠22週以降にお腹の張りや痛み、出血等が見られることをいいます。22週前であれば、切迫流産、22週を経過すると切迫早産となるのです。
切迫早産は、出血の有無や腹痛だけでなく、子宮頸管の長さが診断基準に用いられます。通常は4センチほどある子宮頸管が極端に短くなっている場合で、子宮の収縮が起きている場合は切迫早産と診断されることが多いです。
切迫早産は切迫流産とは異なり、明確な治療法があります。まずは、母親が安静にしておくこと、そして子宮収縮を止める薬を服用することです。子宮の収縮や子宮頸管の長さによって、点滴で24時間薬剤治療を行うこともあります。症状によっては絶対安静で寝たきりになるというケースも。
適切に治療することで、臨月まで妊娠を継続することができる可能性が高まります。切迫早産と診断されて薬が処方されている場合は、決して無理をしないようにしましょう。
お腹の赤ちゃんを守ることができるのは自分だけ。ほんの数か月の辛抱ですので、医師の指示に従って安静を守りましょう。
妊娠22週未満で切迫流産と診断された人は、その後も子宮頸管無力症などになりやすく、切迫早産等のリスクが高まることがわかっています。切迫流産と診断されたら、体を冷やすことや激しい運動、重たいものを持つ、長時間の立ち仕事、大きくストレスがかかることは避けて、自身の体をいたわってくださいね。
まとめ
切迫流産は妊娠22週未満で、腹痛や出血が見られるときに診断されます。流産しかかっているケースもあれば原因不明の出血というケースもあるので、流産という名前に怯えずにしっかりと医師の説明を聞きましょう。
切迫流産で安静を指示された場合は、仕事や家事、育児が大変でも体を休めてください。妊娠12週を超えて切迫流産と診断された場合は投薬治療等が効果的なので、医師の指示通りに服薬しましょう。
ママも頑張っていますが、赤ちゃんもお外に出ない様に頑張っています。冷やさず、安静をメインにお医者様の指示に従ってくださいね。