【専門家監修】双子の出産はハイリスク?知っておきたい注意点や対策

助産師・浅井貴子先生による監修記事です。
並んでいると「可愛い!」と思うことも多い双子の赤ちゃん。
ところが、実際に双子を妊娠・出産をする場合は初期からリスクや悩みを抱えることになり、想像以上に大変なんです。
不妊治療の件数が増えるにつれて発生頻度も上がってきているという双子について、妊娠中や出産時のリスクとその対策方法を中心にまとめてみました。双子を妊娠中の方はもちろん、その身近にいる方にも読んでみてほしい内容です。
双子の種類は3つある
ひと口に双子と言っても、受精した卵子の数によって「一卵性」と「二卵性」に分かれていることは知っている方も多いと思います。
ですが、最近は子宮内に作られる絨毛膜や羊膜の数よって3つのタイプに分けるのが主流です。
- 絨毛膜…胎盤の数
- 羊膜数…赤ちゃんの部屋の数
双子の妊娠・出産で生じるリスクは、このタイプによって大きく異なります。
併せて妊娠の経過や診察を受けられる病院も変わるので、まずはこの種類(膜性)を知っておきましょう。
膜性診断を受けよう
妊娠10週ころまで受けられる「膜性診断」では、お腹の中にある胎盤の数と、赤ちゃんの部屋が分かれているかどうかを確かめることが可能です。
医師はこの結果を元に、どんなリスクが双子の胎児に生じる可能性があるかを見立て、妊婦健診や出産時に活かします。
妊娠週数が進みすぎると診断が難しくなり、逆に時期が早すぎても羊膜が確認しづらい場合も。病院の指示に従って適切なタイミングで受けるようにしましょう。
それぞれの特徴は?
胎盤や赤ちゃんの部屋の数でリスクが異なると前述しましたが、具体的にどんな違いがあるのかピンとこない方も多いはず。分かりやすいように簡単に説明していきます。
胎盤も部屋も2つずつ(DDツイン)
「DDツイン(二絨毛膜二羊膜)」と呼ばれるパターンです。
- 胎盤も赤ちゃんの部屋も胎児と同じ数だけある
- リスクは最も低く、単児妊娠の3倍
- 二卵性は必ずこのパターン
- 一卵性でも2、3割の確率で起こる
DDツインは成長に必要な酸素や栄養がそれぞれの胎盤から供給され、へその緒が絡まる心配もありません。
双子の中では最もリスクの低いケースですが、それでも単児妊娠の3倍はリスクが伴うと言われています。油断せず、定期的な健診と無理のない生活を心がけましょう。
胎盤は1つ、部屋は2つ(MDツイン)
「MDツイン(一絨毛膜二羊膜)」と呼ばれるパターンです。
- 胎盤は1つで、赤ちゃんの部屋は分かれている
- リスクは単児妊娠の10倍
- 一卵性の7、8割がこのパターン
- 1つの胎盤を共有している
MDツインは1つの胎盤に2つのへその緒がつながっている状態です。これにより、胎児の体重差や、TTTS(双胎間輸血症候群)を引き起こす場合が。
トラブル発生時は少しでも早い発見と、適切な処置が求められます。
胎盤も部屋も1つずつ(MMツイン)
「MMツイン(一絨毛膜一羊膜)」と呼ばれるパターンです。
- 胎盤も赤ちゃんの部屋も1つしかない
- 最もリスクが高く、単児妊娠の100倍
- 一卵性のうち1%程度にしか見られない
- へその緒が絡まる恐れがある
MMツインもMDツインと同じように胎盤が1つなので、へその緒から供給される酸素や栄養の偏りが生じる場合があります。さらに、2人の赤ちゃんが1つの部屋に入っているため、へその緒が絡まってしまうケースも。
最も珍しく、リスクも高い状態のため、受け入れ先の病院が見つかりにくい可能性もあります。
双子の妊娠&出産のポイント
双子は妊娠中も出産時も、さまざまなリスクが伴います。
妊娠中に起こりやすいトラブル
- お腹が大きくなりやすい
- 浮腫や腰痛などが安定期から出やすい
- 母体の貧血
- 妊娠高血圧症候群などの発症
- 胎児の成長に差が出る
- 流産や早産
少しでも早く異変や兆候に気付くために、双子を妊娠している場合は1、2週間に1回のペースで検診が行われます。エコーで赤ちゃんの成長を確認したり、羊水量を測ったりするほか、母体の様子もチェックします。
単児妊娠の倍以上通院することもあるので必然と負担は大きくなりますが、リスク管理のために必要なことです。
産院選びについて
さらに、出産時もさまざまなリスクが高まります。
- 未熟児や低出生体重
- 帝王切開や吸引分娩、鉗子分娩
- へその緒がからまる
- 2人目が逆子になる
- 弛緩出血
分娩の途中で帝王切開に切り替わることもあり、産後もなかなか子宮が小さくならず、胎盤の剥がれた跡から出血が続くこともあります(弛緩出血)。
このように、双子の出産には専門の医師による正確な診察と診断、迅速な対応が求められます。そのため、常駐の医師がいない助産院での双子出産はできません。
中核病院や個人病院はケースバイケースになり、設備や人員の受け入れ体制が整っていれば、経過が良好なDDツインなら受け入れてもらえる場合もあります。
MDツイン・MMツインやその他のトラブルが見られる場合は、NICUを併設している周産期母子医療センターなど、より高度な病院を紹介されることがほとんどです。
妊娠の経過次第で転院となることもあります。
早産のリスクが高いときは、妊娠30週前後から管理入院となることもあります。
管理入院では張り止めの点滴を入れたり、定期的な経過観察を行ったりします。さらに、もしもの急変時にも迅速な対応が可能になるメリットも大きいです。
双子の出産方法は?
双子の出産は帝王切開となるケースが多いですが、病院や医師の方針、妊娠中の経過などの条件が揃えば自然分娩も不可能ではありません。
基準は病院によって異なりますが、条件には胎児の胎位や推定体重などが挙げられることが多いです。出産の経過によっては1人目が自然分娩、2人目は緊急帝王切開となるケースも。
出産時期は双子の場合、少し早めの妊娠36週~37週が推奨されています。
これは妊娠週数が進むにつれて、双子が突然お腹の中で亡くなるケースが増えるためです。出産日を医師が決められるという点から、帝王切開を選ばれることも。
自然分娩でも、促進剤で陣痛を促すなど、医療介入のある出産となることが多いです。
費用はどれくらい?
双子に限らず、出産費用は曜日や時間・処置内容により人それぞれ。
事前に金額を出すことは難しいですが、双子の場合は単児出産の2倍程度かかった、という声が多く聞こえてきます。
ちなみに、子ども一人につき42万円が受け取れる「出産育児一時金」は双子なら2人分受け取れます。そのため、基本的には自費負担が高額になることは少ないです。

健康保険に加入していれば、高額医療費制度を使うことも可能です。急な場合でも後日手続きをすれば還付が受けられますし、事前に限度額認定証を申請しておいてもいいでしょう。
条件が当てはまれば、任意保険の入院・手術給付金が受け取れることも。妊娠前から加入している保険がある場合は、事前に内容を確認しておくと安心できるかもしれません。
双子出産に向けての対策
双子の妊娠・出産はいつなにが起こるか分かりません。
そのため、いつ入院することになってもいいように日ごろからシミュレーションを行い、入院準備も早めに済ませておきましょう。
周囲の理解と協力が必要
また、双子は妊娠中から産後まで通して、周りの人の協力が必要不可欠です。夫婦間はもちろん、実家やきょうだい、できれば近所の人のサポートも受けられると理想的。
どうしても難しい場合はヘルパーさんやファミサポの利用もおすすめです。事前の利用登録や情報収集が必要になるので、こちらも早めに動いてくださいね。
ツインサークルに参加
周りに双子の出産・育児経験がある人がいない…という場合は、ツインサークル(多胎サークル)に参加してみるのもいいでしょう。先輩の双子家族にアドバイスや体験談を教えてもらえたり、同じような境遇の方と悩みを共有できるかもしれません。
ツインサークルは市役所や支援センターへの問い合わせで教えてもらえるほか、ネット検索でもHPや一覧が探せます。通いやすい場所、雰囲気が合いそうなサークルが見つかったら、ぜひ足を運んでみてください。
双子以上はリスクがあるので、大きめの医療機関を受診していれば問題はありません。
双子用のベビーカーや授乳クッション、ミルクを同時に与えることができる「ママ代行ミルク屋さん」などの商品も増えていているので便利なものは積極的に使い、ママの負担を少なく出来るように妊娠中からリサーチしておきましょう。